日本人は睡眠時間が足りない国民として有名です。OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国中、なんと最下位の7.3時間しか睡眠が取れていないとのこと。しかし日本人だって本当はぐっすりたっぷり眠りたい。そんな気持ちを反映しているのか、いま「睡眠市場」が大変注目されています。快眠効果があると評判になった「ヤクルト1000」が入手困難になるほど売れていることからもよく分かります。
さて今回は「睡眠不足になると抜け毛が増えるのか?」について解説していきましょう。
睡眠不足は抜け毛を進行させる
抜け毛の原因として男性型脱毛症(AGA)や円形脱毛症が有名ですが、それ以外にも様々な原因があることをご存知でしょうか。甲状腺機能低下症などの疾患は脱毛症を合併することで有名です。また喫煙やバランスの悪い食生活、過剰なダイエットなども薄毛をもたらします。
今回は生活習慣の中でも睡眠に着目します。なんと「睡眠不足は抜け毛を進行させる恐れ」があるのです。
睡眠の役割
健やかな生活のためにきちんとした睡眠が必要なことはもはや説明不要でしょう。睡眠には心身の疲労を回復させる役割があり、睡眠時間が足りないなどの「量的」問題や、なかなか寝付けないなどの「質的」問題が蓄積すると生活に支障が出るだけでなく、健康を害する恐れが生じることが分かってきました。生活習慣病やうつ病などが睡眠障害から生じると言われており、正しい睡眠を知ることが非常に重要であると言えます。
しかし「睡眠にまつわる常識」が実は正しくないことも分かってきました。次の段落で説明します。
「22時から26時の間に髪は作られる」ってホント?
薄毛を気にしている人なら
「夜更かしはいけない。夜10時には就寝すべき」「夜10時から深夜2時は『睡眠のゴールデンタイム』、この間に成長ホルモンが放出される」「皮膚や髪の毛の代謝には成長ホルモンが欠かせない」
などの説を聞いたことがあると思います。しかし最近の研究では「少し事実と異なる」ということが分かってきました。
睡眠と成長ホルモンの放出には深い関係がありますが、それは「寝た時刻」ではなく「睡眠直後のノンレム睡眠」が関与しています。つまり「何時に寝たのか」が大事なのではなく「どれだけ深い眠りに入っているか」が重要だ、というのです。具体的に言えば「夜10時に寝ても眠りが浅い」のはダメ、「深夜1時に寝てもストンと深い眠りに落ち」れば良いということです。入眠直後に訪れる深い眠り(ノンレム睡眠)と、90分周期で訪れる浅い眠り(レム睡眠)、これらの一連を「メジャースリープ」と言い、成長ホルモンがきちんと分泌されるためにはこの「メジャースリープ状態」をしっかりまとめて取ることが重要です。
AGAは適切な治療が必要
一方、薄毛の原因がAGAだとしたら解決策はただ一つ、つまり「適切な治療を受ける」ということ。食生活を改善すること、メジャースリープを意識した睡眠を取ること、禁煙すること、正しいヘアケアを行うこと、これらが不要とまでは言いませんがAGAを改善する効果においては不十分であると言わざるを得ないでしょう。
20代半ばから額が広くなってきた、頭頂部が薄いと指摘された、父親や祖父がAGAだ、このような方々は早めに病院での診察を受けましょう。そしてAGAと診断されたらなるべく早く治療を受けることをお勧めします。
「自分はまだ大丈夫」「自分がAGAだなんて認めたくない」という気持ちもよく分かります。しかしAGAで重要なのは「早期発見・早期治療」です。重症になってから治療を受けても治療満足度が上がることはありません。ご注意いただきたいと思います。
良い睡眠をするために意識する4つのこと
良い睡眠を得るために意識すると良いことを、最新の研究内容も交えて解説します。
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●毎朝同じ時間に起きること
適度な運動は適度な疲労感を生み、よく眠れることは皆さんもご存じのはず。できれば毎日、軽い運動ができると理想的です。とは言えスポーツジムに通ったり近所をジョギングしたりする必要はありません。家事や通勤などの日常的な活動でも十分です。
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●適度な昼寝
昼食後に短い昼寝を取ることで頭がスッキリとし午後の仕事もはかどる、なんて経験をされた方は少なくないでしょう。しかし30分以上の昼寝は要注意。1時間も2時間も寝てしまい夜になっても眠くならない、皆さんも覚えがあることと思います。昼寝は短時間で済ますように。
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●スマホは控え目に
正しい睡眠に不可欠なメラトニンが、スマホのブルーライトによって分泌が抑制されることが分かっています。ベッドに入ってスマホを見る、というのは避けた方が良いですね。最近はブルーライトを抑える機能を備えたスマホもあるようですが、SNSやゲームはそもそも刺激が強いもの。スマホを見ながら寝落ちするのはあまり感心できません。
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●腸内環境を整える。
ラクトフェリンを継続的に摂取することで睡眠感や気分、腸内環境が改善したとする報告があります。上記の3つに加え、腸内環境を整える食品やサプリメントを積極的に摂ることをお勧めします。
締め
まとめです。
健やかな髪の毛を作るためには成長ホルモンが欠かせません。以前より「22時就寝」が成長ホルモンの放出には欠かせないとされてきましたが、近年では誤った認識であることが分かってきました。メジャースリープを意識して正しい睡眠を取ることが重要で、そのためには適度な運動やコンパクトな昼寝の他に「腸内環境を整えること」が大切であると言われています。
一方、抜け毛をもたらす疾患については適切な治療が必要です。特にAGAについては睡眠やヘアケア、育毛剤で改善できるものではなく、フィナステリドやミノキシジルなどの薬物治療が不可欠です。
睡眠でお困りの方は睡眠外来を、AGAでお悩みの方は皮膚科や美容クリニックを訪れてみてはいかがでしょうか。
よくある質問と回答
AGAになる原因は?
男性ホルモンの影響です。
男性ホルモンのテストストロンが「5α-リアクターゼ」という還元酵素によって変換されてできる体内物質、DHT(ジヒドテストステロン)です。このDHTが、正常なヘアサイクルの成長期を阻害(短く)する原因物質と考えられているのです。
薄毛(AGA)治療薬は、水で飲まないとダメですか?
できるだけ水で服用してください。
薄毛(AGA)治療薬は、できるだけ水で服用してください。カフェインの含まれているコーヒー・紅茶で服用すると頭痛などの副作用を起こすことがあります。またお茶や牛乳、ジュースは薬の吸収率を低下させる働きがあり、アルコールは強い眠気や悪酔いを引き起こすこともあります。タブレットは、正しく服用することで初めて高い発毛効果が現れる発毛薬であることをご理解ください。なお、コーヒーやお茶、お酒などを飲む場合は、タブレットの服用後、30分ほど時間を空けてからにしてください。
なぜ、病院でないとダメなの?ヘアサロンでも良い気が…
ヘアサロンでは結果を得ることが難しいとされています。
薬の処方や注射針による薬剤注入は医療行為なので、原則として医療従事者(医師や看護師)でなければ出来ません。つまり、AGA治療に有効なフィナステリドやミノキシジルの処方、ならびにそれらの有効成分を直接頭皮に注入することは、医師が常駐する病院以外には禁止されているのです。そのため、ヘアサロンなどの非医療機関では薄毛治療で満足いただける結果を出すことは難しいとされています。