「脂肪吸引したいけど、ボコボコになるのは嫌だ」
「脂肪吸引したけど、ボコボコになってしまった」
このように脂肪吸引後に起こるボコボコについて、不安や悩みを抱えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
実は、脂肪吸引後の表面不整は誰でも必ず発症します。しかしその原因が何かによって対応が大きく変わってきます。
そのため「どうしてボコボコするのか?」についてよく知っておく必要があります。
この記事では脂肪吸引後の表面不整(ボコボコ)について、医師監修のもと徹底解説いたします。原因や対策、改善方法などについて述べていきますので、これらを理解し、しかるべき行動を取りましょう。
脂肪吸引検討中の方や施術後の表面不整に悩んでいる方は、この記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修医師ゴリラクリニック総院長 稲見 文彦
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経歴
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2000年東邦大学医学部卒業
東邦大学形成学科学科学教室入局
2003年大手美容形成外科入職
2008年京都分院長に就任
2015年ゴリラクリニック総院長就任
- 所属学会
- 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
ボコボコの要因は「自然経過」と「手技の稚拙さ」の2つ
脂肪吸引後に起こる表面不整には、大きく2つの原因があります。
1つは「自然経過」によるものです。脂肪吸引はチュムセント法と呼ばれる方法で局所麻酔を行います。
この方法は大量の局所麻酔液を注入するため治療部位が腫れあがり、施術後は包帯やガードルなどで圧迫するため、これらを解除した後はデコボコとした見た目になるのです。
例えていうならば、太ももにボリュームがある方がきつい網タイツを履いているような状況です。
また、脂肪吸引後の皮下組織は治る過程で「拘縮」と呼ばれるひきつれを起こします。硬くギュッと引き締まるためデコボコとした外見になるのですが、これも誰にでも起こり得る症状です。
そして重要なのは、自然経過による表面不整は時間とともに改善するということです。
もう1つの原因は「手技の稚拙さ」、つまり吸引の仕方が下手であるということです。脂肪を均一に吸引しなかったことでデコボコしてしまうため、美容外科医はこれを起こさないように気をつけて施術を行います。
手技の稚拙さによる表面不整は時間がたっても改善することはありません。何らかの方法で修正しなければならないのです。
POINT
ボコボコ(表面不整)の原因が手技の稚拙の場合、時間がたっても改善しないため特別な対処が必要。
どちらかを見極めるタイミングは施術してから6か月後
では、このボコボコが自然経過によるものなのか手技によるものなのか、どのように見極めればよいのでしょう。
基本的には施術後6か月は経過を追う必要があります。数週間や1-2か月程度では分からないことが多いので、注意が必要です。
6か月が経過する頃には「自然経過」が原因であれば綺麗に治っているはずです。逆に6か月経っても残っているとしたら、手技の稚拙さが原因ということになります。
POINT
6か月たってもボコボコ(表面不整)が改善しない場合は、手技の稚拙と判断してよい。
自然経過による表面不整の対処法
表面不整の原因が自然経過によるものの場合、何か特別に対応する必要はありません。しかし患部が回復するまでに数ヶ月を要しますので、術後の経過を早める方法についてご紹介します。
早く治したいのであれば適度なマッサージを
施術からある程度時間が経過した場合、患部を適度にマッサージすることで回復を早めることが可能です。
クリニックによってはエンダモロジーと呼ばれるマッサージ機器を用いることもあります。インディバを用いて患部を温め、回復を促すこともあります。
いずれも「施術の仕上がりを改善する」というより「回復を早める」処置ですので、必須というわけではありません。
「脂肪吸引の仕上がりが満足できない」とクリニックに相談したところ「マッサージをやらなかったことが原因だ」と対応されたケースを耳にしますが、これは誤りです。
マッサージを行うのは施術後2-3週間経ってからが良いでしょう。無理をする必要はありません、痛いと思ったら止めましょう。
ただし「怖いからずっと動かさない、触らない」というのもお勧めはできません。1ヶ月も経てば腫れはだいたい治まっているはずです。少しずつ動かしたり揉んだりストレッチしたりしてみましょう。
手技が稚拙なことによる表面不整
脂肪吸引の手技が稚拙なため表面不整が生じた場合、何年経っても自然回復することはありません。そのため表面不整を生じた際の対処方法を知っておくことが非常に大切です。
ここでは対処法と、そもそも「なぜドクターの手技が稚拙になってしまうのか」を解説致します。
どうして起こるのか?
「手技が稚拙」と言うのは簡単ですが、そもそも脂肪吸引というのは高度な技術を必要とする施術です。
利き手でカニューラを動かし、反対側の手で皮下脂肪の感触を確かめながら吸引します。これが脂肪吸引の最大のコツです。
また患者さんの身体をベッドから起こし、均一に吸引できているかどうかを目で確かめる必要もあります。手間を惜しまず確認する根気強さも医師には要求されます。
さらに脂肪吸引を必要としている部位は局面であるため、直線であるカニューラで吸引するのは物理的にも難しいのです。
どんな医師も最初から上手なわけではありません。
経験豊富な医師の指導のもと上手くいかない時があっても最善を尽くし、さらには豊富な解剖学的知識と美的センスを持った医師だけが脂肪吸引を担当することが許されるのです。
つまり「どうして起こるのか?」についての回答としては
・医師の経験が浅い
・正しい指導を受けていない
・経験豊富な医師でも過剰勤務によってはミスを犯すことがある
などが挙げられます。
デコボコを未然に防ぐ、クリニックの選び方7か条
それでは脂肪吸引で失敗されないために、どのようなことに気をつければよいのでしょう。医師の視点から7か条を解説します。
①大手美容クリニックだからと言って過信は禁物
大手美容クリニックの強みはなんといっても症例数。「症例件数〇万人」なんて書いてあると経験豊富で信頼できると感じてしまいます。
しかし大手美容クリニックには在籍している医師の数も多く、全ての医師が同じように脂肪吸引に長けているわけではありません。
また人の入れ替わりも激しく、新人ドクターにあたる可能性もあります。なので「大手だから安心」とは言えないのです。
②時間が許す限り、複数のクリニックでカウンセリングを受けるべき
美容外科医はある意味で「職人」と言えます。それぞれが「自分が考えるベストな方法はこれだ!」という信念を持って仕事をしていますし、時にはドクター同士で信念がぶつかり合うことも。
10人の美容外科医がいれば10通りの脂肪吸引がある、そのように考えてみてください。
ですので、できるだけ多くのドクターの診察とカウンセリングを受けることをオススメします。貴方の考えに最もマッチした先生を選ぶのが成功への近道だと思います。
③答えにくい質問にちゃんと答えてくれるか否か
例えば「脂肪吸引って失敗することはないんですか?」などの質問をドクターにぶつけてみましょう。
「失敗なんてしませんよ」と自信満々に答えたり「不安だったら他のクリニックでやれば?」などと不機嫌になったりするドクターは信用できません。
答えにくい質問にも真面目に真摯に答えてくれるドクターこそ、きちんとした施術をしてくれるものです。
④症例数は少ないよりは多い方がいい
脂肪吸引は技術力が必要です。それなりの数をこなさないと上手にはなりません。さらに言えば脂肪吸引には体力も必要です。
私が脂肪吸引を受けるとしたら「30-40歳台の元気なドクター」にお願いすると思います。
⑤症例写真は「チャンピオンケース」と考えるべし
どのクリニックも症例写真、いわゆる「ビフォーアフター」を用意していると思いますが、激変している写真に惑わされないよう注意が必要です。
このような写真は「チャンピオンケース」と言って、とびきり結果が良かった写真を用いることが多いのです。貴方も同じように激変できる、という訳ではないので誤解されませんように。
むしろ「このような方は脂肪吸引しても、あまり変化がありませんよ」といった「ビミョーな写真」をあえて提示しているクリニックこそ、信用できると私は思います。
⑥不要なことは「必要ないよ」ときっぱり言ってくれる
今のままでも十分細いのに「脂肪吸引したい!」と希望される患者さんは少なくありません。そのような方にも脂肪吸引をバンバン勧めてくるクリニックは警戒すべきです。
きっぱりと「貴方は脂肪吸引の適応がないから、考え直しなさい」と諭してくれるドクターこそ、真の名医ではないでしょうか。
⑦「根こそぎ吸引」には要注意
脂肪吸引は「ただ脂肪をたくさん吸えばよい」という施術ではありません。吸引する場所と吸引しない場所のバランスを考えつつ、取りすぎないよう調整する技術が必要です。
「〇〇リットルも脂肪を吸いました」「根こそぎ脂肪を吸引します」と宣伝するドクターもいるようですが、個人的にはあまり信用できません。
以上、ドクターを見極めるコツを私のポリシーも踏まえて7つ紹介しました。
信頼できるドクター選びは「家選び」や「ジュエリー選び」と似ています。
そのような高額の買い物をするときには、いろいろなお店を見て回り、じっくり話し合って検討しますよね。ドクター選びもそのように行って欲しいと私は思います。
ボコボコしてしまったら、必ずクリニックに相談を
手技が稚拙だったため、脂肪吸引の後にデコボコしてしまったらどうするのか。基本的に自分の力ではどうにもなりません。まずは担当医、そして施術を受けたクリニックに相談しましょう。
一般的な解決策としては、以下のようなものがあります。
・脂肪吸引が足りない部分を改善する:再手術や脂肪溶解注射、超音波による脂肪溶解機器など
・脂肪吸引しすぎた部分を改善する:脂肪注入術
結果に満足いかなかった場合、通常であれば担当医が最後まで責任を持って修正術を行います。
しかし、その担当医が責任回避したり、「もうあの先生にお願いするのはイヤだ」と貴方が感じたりした場合は他のクリニックや他のドクターを頼るのも一つの方法です。
いわゆる「セカンドオピニオン」を受けてみても良いと思います。
クリニックによっては「保証つき脂肪吸引プラン」を用意しているところもあるようです。
やや割高にはなりますが、万が一修正術を受ける必要が出た場合に無料もしくは低価格で施術を再度受けられるというプランです。2度も施術を受けるのはイヤかもしれませんが、コスト的には安心ですね。
まとめ
脂肪吸引による表面不整(ボコボコとした状態)は、施術後の経過で生じてしまうものと、美容外科医のテクニック不足で生じてしまうものがあります。
決して安易な気持ちで受けるのではなく、クリニック選びやドクター選びを十分に行うことでリスクを減らすことが可能です。
もしボコボコになるリスクを根本的に避けたければ、他の方法を検討するのも良いと思います。
最近、皮下脂肪を凍結させ部分痩せ効果をもたらす「クールスカルプティング」や腹直筋を最大収縮させて鍛え上げる「エムスカルプト」など、皮膚を切開しない痩身治療が登場し注目を集めています。
脂肪吸引に比べると歴史が浅い治療法ですが、十分に期待できる方法ではないでしょうか。
参考
文光堂 「スキル美容外科手術アトラスⅡ 脂肪吸引・注入術」 市田正成著
克誠堂出版 「形成外科 増刊号 vol.43 美容外科 私の方法と工夫」
同 「形成外科 vol.51 脂肪吸引法と脂肪注入法 Ⅰ」
同 「形成外科 vol.51 脂肪吸引法と脂肪注入法 Ⅱ」
全日本病院出版会 「PEPARS No.147 美容医療の安全管理とトラブルシューティング」
医学出版 「美容皮膚医学BEAUTY #12 特集 痩身治療の「今」を知る!」
この記事の監修医師ゴリラクリニック総院長 稲見 文彦
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経歴
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2000年東邦大学医学部卒業
東邦大学形成学科学科学教室入局
2003年大手美容形成外科入職
2008年京都分院長に就任
2015年ゴリラクリニック総院長就任
- 所属学会
- 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)