【離島の歴史】日本のタブーから恋人の楽園へ……変わりゆく三重県志摩市「渡鹿野島」の今を見てきた話

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文:星野藍
グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。

渡鹿野島

日本は小さな島国だ。しかし小さいとは言え、内なるものの濃縮された文化、歴史、風習などの密度の濃さは世界に類を見ない程深く濃いものがあるように感じる。

調べれば調べる程、興味深い物や事が湧き水のように溢れ出て止め処ない。私にとってそのような事項のひとつに、渡鹿野島という島の存在があった。

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三重県志摩市、伊勢志摩国立公園内にある小さな島。

ここへ向かうまでの道のりは、伊勢神宮参拝客により生まれた地獄の大渋滞のためなかなか骨が折れた。渋滞さえなければ容易い道のりであっただろう。

何とか島への船着場に着くも逢う魔が時はすぐ目前。これは急がなければ。

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船着場から民間が運営する定期船に乗り島へと向かう。料金は片道150円。夜遅く迄の便もあるがそちらは値段が上がり最大500円。

あれ、渡鹿野島に夜に用がある人って今いるのかな……?

この島の通称。それは“売春島”。私は嘗ての日本のタブーに触れに行くのだ。

 

日本のタブーがあった島?

船に乗る事3分ほど。あっという間に渡鹿野島に着いてしまった。

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思ったよりも乗車客は多いが子供からお年寄り、家族や男性同士の友達グループなど様々だった。

島内の宿泊施設を利用する宿泊客は施設から手配された船に乗り島へと渡る。私たちが定期船に乗った時は日帰り観光目的の客と島内の住民がメインだったと見受けられる。

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釣りを楽しむ観光客もいるようだ。

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船着場からすぐに大きなホテル。

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しかし降り立ったものの、どうしたらいいのかよく分からない。

「ねぇ、これどっち行ったらいいの?」
「うーん……どっちだろうねぇ……」

嘗てこの島は、売春産業により栄えた歴史がある。その歴史は古く江戸時代迄遡る。

江戸と大坂を連絡する菱垣廻船・樽廻船が増えた事により、避難・風待をする船乗りたちの為の宿が出来る。そして船乗りたちの相手をする水上遊女なども集まってくる。そして遊郭街としても大いに栄え「女護ヶ島」といった別名を持つまで成長したのだ。

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80年代のバブル絶頂期には居酒屋にスナック、パチンコ屋やストリップ劇場等が犇き、夜は遊びに繰り出す人々が多すぎて歩く事すら困難になったという話まである。人口200人ほどしかいない小さな島に男性的な娯楽要素が集約され、それはまるで大人の桃源郷のようなものだったに違いない。

しかしそれも今は昔。2013年9月、渡鹿野島観光協議会は志摩市や三重県警と連携し「性産業による島のイメージを無くし、健全な観光地を目指す」とした「渡鹿野島安全・安心街づくり宣言」を出した。

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今は渡鹿野島では性産業は一切行われていない、そういった話まで聞いた。

(本当かなぁ……?)

だからこそ、見に行くのだ。しかし来てみたのはいいものの、初っ端から余りの島の廃れっぷりに困惑してしまった。

船着場からすぐ近くの飲食店も営業している気配がない。(夜になってから営業するのかもしれないが)

「とりあえず、ぐるっと一周するように歩いてみようか」

 

島内散策

建物と建物の間の小さな路地を縫うように歩いていく。何処に繋がるかは分からないが何処かへは出るだろう。

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このスナックか喫茶店らしき店からも営業している空気感はいまいち感じられない。

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歩いていくとすぐ坂道となる。

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飲食店、宿泊施設のあったエリアからすぐに住宅地らしきエリアへ。

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歩きタバコ禁止の看板。確かに家々が密集した小さな島で火事になったら、大事どころの騒ぎではない。

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廃ホテルらしき建物も確認出来るが、時間がないのでここは泣く泣く諦める。

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個人菜園、日本的一般住宅。

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緩やかな上り坂が続く。

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人は住んでいるだろうが、人の姿は見受けられない。寒い日だったので家の中にいたのだろうか。

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折り返し地点に来たようだ。取り敢えず市街地方面へと向かった。

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犬を散歩させるに丁度良さそうな小道ではあるが、犬の姿もそもそも見掛けない。

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小高い場所より街を望む。本当に小さな島だ。

市街地の反対側ではあおさ海苔・真珠・カキの養殖も行っている。宿泊したら美味しい海の幸にありつけるだろうが、今回は悲しくも日帰りだ。

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市街地へ戻っていく途中、神社を見つけた。

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うらびれ寂しさを感じる。

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通り過ぎて歩いて行くと今度は鳥居があった。階段を暫く登っていく事になりそうだが折角なのでこちらも覗いてみよう。

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なんだかみんなのうた感のあるポスト。

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杉の木が立ち並び、日の明るい時間帯でも暗いであろう境内。神聖であるはずの場所なのに、何だか妙に空気が重い。

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そういえば渡鹿野島は、嘗ての性産業のイメージを払拭し、ハート型の形をしている事から恋人の聖地としてもアピールしていこうとしているそうだ。

ハート型である事、そして縁結びの神様。

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ハート型の絵馬に恋人同士で願いを書き想い出を重ねていくのだろうか。なんとも甘酸っぱいが、場所の雰囲気が不気味なので正直ロマンの欠片も感じられない。

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気味が悪い場所なので一刻も早く離れたい。だがどうにも好奇心が邪魔をしてなかなか離れられない……。

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ぐるりと巡って階段を駆け下りていくと、さっき見かけた神社のある広場に出た。

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毎年7月下旬の土日には全島民上げての大きな祭り・天王祭が行われている。旧来は7月23日〜24日に行われていたが近年は土日に祭りを開催できるよう日程を調整しているとの事だ。

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市街地には面白いオブジェが沢山飾られたユニークな宿もある。冬は閑散期だが夏になると多くの観光客が訪れるのかもしれない。

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こうした寂れたスナックは自分にとって堪らない被写体だ。営業をしているかどうかは分からない……。

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過去のレポートをネット上で読むと、緊張感がまだ漂うアングラチックなものが多かった気がする。しかし実際に歩いてみるとそんな事はなく、寧ろ廃れすぎて大丈夫だろうかという気持ちにすらなってくる。

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「これは……桃源郷は今は昔って事でいいのかな」
「そうかもねぇ」

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絶賛営業中の綺麗なホテル、寂れた歓楽街の名残。島唯一の商店の灯りが煌々と輝いて見えた。

 

さよなら渡鹿野島、しかし

「夜になったし、もう帰ろうか」

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ピストン運行している定期船は待っていればすぐにやってくる。

この日は風が強い日だった。体が冷えるので待合室で待とうとしたら、誰かがゴミ箱に捨てたのであろう数日前の食材が異臭を放ち、締め切られた待合室は酷い臭いで充満していた。

「ダメだ、外で待とう」

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程なくしてやってきた定期船の運転手に再び150円を払う。乗客は自分たちだけだった。

「何もなかったけどレトロで面白かったね」

私はそうした場所が好きなので、ずっと気になっていた場所に行けただけで満足だった。

本島側の船着場に戻り、駐車場へと向かう。目の前からやってくる7、8人の女性たち。

(あれ、もう夜なのに? 今から観光かな?)

コートの下から確認出来るすらりと伸びた美しい脚。全員お揃いの白いタイトスカートにハイヒール。長い巻髪はぐっと華やかにまとめられ、お顔は美しく彩られている。

(あれ……?)

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「ね、ねぇあれってさ」

私は友人の顔を覗く。

「コンパニオンだねぇ」
「え、え、売春淘汰されたんじゃないの」
「内部ではやめて外注にしたんじゃない?」

ネット上のレポートでは、もうこの島に売る春はない、女の子がいても10人程しかいない、ただの寂れた島でしかないというものばかりだったが、コンパニオンが上陸していく様子を書いたものはなかった。

「皆んな昼間に来て昼間に帰ったからコンパニオンさん見なかったのかな」
「そうかもねぇ」

友人ののほほんとした口調もあってか、何だか拍子抜けしてしまった。

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しかしそれはあくまで憶測でしかない。ノーピンクの普通のコンパニオンの可能性もある。

だが煌々と光るあのホテルの灯りを見ていると、あんな小さな島にわざわざ宿泊しに行く客がこんなにも多いのは不自然に思えてしまうのだ。ほぼ満室ではないか。

「ちょっと今度、男友達引き連れて泊まりに行ってみてよ」

これからも渡鹿野島から、個人的には目が離せない。

ライター :星野 藍

星野

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。

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