【3.11から8年】”終わらないフクシマ”にも確実な変化の兆しが……。 福島県双葉町へ久しぶりに訪れた時の話

20190311_fukushima_futaba_13
文:星野藍
グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。

3.11から8年

3月11日。忌まわしき記憶の日となってしまったが、この日は実は父の誕生日だ。地震後、実家へ電話が繋がらず漸く繋がった時の私の一言目が「大丈夫? お誕生日おめでとう!」だった事を今でもよく覚えている。

その日父は、誕生日ケーキを買おうとケーキ屋に向かっている途中だったが余りに大きすぎる地震が来たので「これは只事じゃないぞ」と家まで急いで引き返した。

自分の誕生日ケーキを自分で買いに行くのがなんだか父らしいが、家に帰ると母が犬を抱えてテーブルの下で不安そうに丸まっており危機感を感じたと言う。

あの日、多くの人々の人生が変わってしまった。自分の身近なところで、それ以上に自分の知らないところで。

20190311_fukushima_futaba_1

自分が撮影する被写体のテーマとして選んでいる“廃墟”というものの価値観が変わったのも丁度震災がキッカケだった。

その活動の一環として、私は定期的に“フクシマ”の撮影へ赴いている。そこに“退廃美”は感じない。あるのは、残酷な現実のみだ。

 

大沼勇次さんらと双葉町へ

2018年5月。この日私は数年ぶりに双葉町へと入域した。

20190311_fukushima_futaba_3

数年前よりも建物が減った……? 解体されたのだ。

国は長い年月を掛けてでもいつか人々が戻れるようにと復興を進めてはいる。しかし、避難した人々には避難先での生活がある。5年も経てば当時0歳だった子供は5歳に、10歳だった子供は15歳になる。

大人が30歳から35歳になる事よりも、その5年の重さは遥かに重い。現地で出来た友達、培われたコミュニティでの人間関係、安定した新たな生活基盤を捨ててまで誰もいなくなった故郷へ戻るかと言ったら、果たして子供たちは皆首を縦に振るだろうか?

20190311_fukushima_futaba_2

「原子力 明るい未来のエネルギー」

原子力に関するこの標語は福島県双葉郡双葉町の看板に記されていたものだが、2011年3月11日に発生した東日本大震災により皮肉な形で全国的に知られることとなった。

1987年、双葉町は原子炉増設の機運を高める目的で標語を町民らから公募した。その結果当時小学校6年生だった双葉町出身の大沼勇治さんが学校の宿題で考案した標語が選ばれた。

2015年になり双葉町がこの標語を掲げた看板の撤去を決めるが、大沼さんは「原発事故の反省を踏まえ、子どもたちにうそのない真実の未来を残すため、負の遺産として残すべきだ」と主張、看板を保存するよう求める要望書を町長と町議会議長に提出した。

しかし願いは空しく2015年の暮れ、標語の入った看板2基の撤去作業が始まった。2016年には町体育館前の看板を撤去した。

 

看板保存の署名活動には私も参加していたので、悲しい結果となり、胸が痛い。

私はそんな大沼さんとひょんな事により知り合い、彼の一時帰宅の際同行させていただくく事となった。

20190311_fukushima_futaba_4

この日は大沼さんの家の線量を確認する日だった。

albumtemp (21)

故郷へ帰るか否か。どちらにしても今ある不動産の今後について決めなければならない。離れた家を解体し土地を売るか、それとも戻る事を前提で残すか。

近隣の家々は解体後の更地も目立つ。廃墟だらけになったこの町だからこそ真新しい更地が妙に浮いているように感じた。

20190311_fukushima_futaba_7

特別に家の中に上がらせていただく。

albumtemp (23)

まずは一階から、線量を測っている。想定していたよりも低いようだ。

albumtemp (22)

albumtemp (27)

家主が消えた家というものは、驚くほど早いスピードで朽ち果てていく。

何処から入るのやらネズミが入り込み、漏水し、運が悪いと家の窓を突き破り泥まみれのイノブタが家中駆け回る。こうなるともうお終いだ。

20190311_fukushima_futaba_13

解体するか否か。この日大沼さんは答えが出なかった。

 

 

双葉町を歩く

検査を終え、墓参りへと赴く。

震災から数年、一時帰宅も出来ない間は墓石が倒れた侭の痛々しい墓地ばかりだったが、今では綺麗に整備された所が多い。

20190311_fukushima_futaba_14

常磐線がまだ再開通していない双葉駅。懐かしい。

20190311_fukushima_futaba_15

今回一番驚いた事がある。

20190311_fukushima_futaba_16

双葉駅のトイレが使えるようになっていたのだ。これには流石に、余りに驚いた。

20190311_fukushima_futaba_18

線量も思ったよりも低い。

20190311_fukushima_futaba_17

albumtemp (25)

現実は机上に存在するものではない。

20190311_fukushima_futaba_20

この建物ももう解体されただろう。

20190311_fukushima_futaba_22

あの時から、時が止まった時計が生々しい。

20190311_fukushima_futaba_23

柱が傾いた侭の神社が未だに持ちこたえ倒壊しない姿には感動すら覚えた。

20190311_fukushima_futaba_24

願いは遠く。

20190311_fukushima_futaba_25

警察、そして民間の警備も多い。建物の陰に隠れるように警備の車に乗った警備員がこちらを見ていた。

度胸試しのように探索する者たちも多い。こうした動きは仕方ない事だろう。

20190311_fukushima_futaba_28

albumtemp (26)

albumtemp (24)

20190311_fukushima_futaba_29

大沼さんが避難した時、奥様のお腹には新しい命が宿っていた。

得体の知れない恐怖から逃げる恐ろしさという事を考えると……帰り道、取材に同行していた母が胸を痛めたように呟いた。

私の地元の福島市は、双葉町から60km程離れている。距離的には大したものではないが、福島というのは特殊な土地で、県を縦3つに分けた“会津・中通り・浜通り”では、それぞれ文化が違う。まるで別な県のようだ。福島市内の人間は同じ県内にも関わらず驚く程双葉町の事を知らない、浜通りの事を知らない人間が多い。

故郷の事、故郷の隣の事すら分からない、というのが実情だ。

20190311_fukushima_futaba_30

だからこそ、私たちは知らなければならないと思う。

“フクシマ”の物語に終わりはない。これからも続くのだから。

ライター :星野 藍

星野

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。

【関連記事】
【3.11から8年】未だ終わらないフクシマの現実~福島県大熊町へ久しぶりに訪れた時の話
【常磐線開通】変わらぬゴーストタウンと変わりゆく「フクシマ」 ~写真家「星野藍」が見た福島県浪江町と富岡町の現在

bnr_skin_thin

ゴリラクリニック対談 堀江貴文×柴田英嗣(アンタッチャブル)篇
【女性にモテない?】胸毛や背毛の悩みは脱毛で解決できます

男性美容外科ゴリラクリニックTOPへ行くモテ男記事ゴリクリハックのトップへ行く

この記事が気に入ったら いいね!しよう

ゴリラクリニックdigの最新記事をお届けします

注目記事

新着記事

ゴリゴリ日記 ライターさん募集中!!

週間アクセスランキングTOP10

【閲覧注意】富士の樹海は想像以上に美しく、発見した死体は想像以上に……。GPS持参で青木ヶ原樹海を探索した話

【刺青夫婦】タトゥーのデメリット・後悔は結婚してから痛感する3つの理由

【激レア】マニアック過ぎィ!!日本屈指の非売品ゲームソフトコレクター「じろのすけ」氏が厳選する非売品ソフトベスト3とは

【裾折りデニム問題】メンズに流行するデニムのロールアップはダサいのか? お洒落なのか? 折り方はあるのか?

【最新カプセルホテル】近未来的モダン空間! カッコ良すぎる竹橋のナインアワーズホテルに行ってみた!

【旨すぎ注意】牛骨の旨味がほとばしるゥ! イスラム教徒も安心の蘭州拉麺の聖地「ザムザムの泉(西川口)」に行ってみた

【IKEAあるある35選】これはあるね!www つい余計なものまで…から始まる、毎度ありがちな「イケアあるある」まとめ

【原価率】回転寿司スシローのネタ原価率を某寿司職人から”外部”リーク! 一部上場記念「スシローうまさ上々祭」のコスパに迫る

【男料理保存版!】神田・東京カオマンガイの門外不出レシピ公開! カオマンガイのプロが語る「究極のカオマンガイ」の作り方 前編

【1話無料】漫画『やれたかも委員会』作者の吉田貴司さんに聞く、やれた「かも」に潜む男たちのリアルな願い(前編)