【レビュー】経済は作るもの、選ぶものになる!「お金2.0」が伝える新世界【佐藤航陽】

お金2.0

最近なにかと話題の仮想通貨をはじめ、自動運転やIoT、シェアリングエコノミー、ブロックチェーンにICOなどのワードをニュースで見聞きすることが増えました。新しい何かが生まれ、それらが拡大しているらしいことは多くの方が感じていることと思います。ではこの先世界はどうなるの? そんな疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回レビューする『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』はそんな素朴な疑問に対する、ひとつの回答といえる書籍です。著者は時間を売買できるサービス「タイムバンク」などで知られる佐藤航陽氏。

著者はいま世界で起きていること、これから加速していく現象を2つの軸から説明しています。経済とは作るものになり、選ぶ対象になるという主張です。

経済は作るものになる

出典:shutterstock

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いま世界で起きていること①「仕組み」の分散化

お金や経済においていま最も大きな変化の流れは「分散化」であると著者はいいます。

 

中央集権の限界

現行の経済システムは中央集権化によって秩序を保っています。中央銀行が通貨を発行して価値を担保し、その運用や課題解決、トラブル対処を行うのは政府や自治体といった「管理者」です。企業におきかえれば管理者は経営者となります。

組織の中心には管理者が存在し、中心に近づくほど集まって権力や情報が集まっていくシステムです。個人と中央のあいだにはたくさんの代理人、仲介者が介在して価値を提供し、何らかの利益を得ています。これは情報の非対称を前提に作られたものであり、情報が偏っていたこれまでの社会では効率的に機能してきました。

しかしインターネットとスマホの登場で社会そのものが一変します。オンライン上で人とものが常時、直接的につながる世界がやってきたのです。そうなると中央集権システムは機能しません。時間と距離の制約がなくなったからです。

これまで力を持っていた代理人や仲介者はどんどん価値を提供できなくなっていき、力を失っていきます。分散化が進んで行くと情報や物の仲介だけでは価値を発揮できず、6時に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力を持つようになっていきます。

佐藤航陽著『お金2.0』(P114より引用)

 

3つの新しい経済システム

すでに分散化の流れを汲んだ経済システムが社会に浸透しつつあります。シェアリングエコノミー、評価経済、トークンエコノミーが代表例です。

アプリ上で個人間によるタクシーの配車取引を完結してしまうUBERや、空き部屋と宿泊希望者をマッチングさせるAirbnbはシェアリングエコノミーの代表格ですが、これらは個人と個人をつなぐネットワークを構築し、支払いの仲介やレビューによる信頼性の担保などを用いてひとつの経済システムとして成立させています。UBERもAirbnbも管理者ではなく、個人をサポートする存在です。個人がネットワーク化した世界における、新しい経済システムといえるでしょう。

また他者からの評価によって経済活動を行う仕組みも登場しています。 人気を博した配信主に対し、ファンが投げ銭によって支援するライブ動画配信などが好例です。日本でもSHOWROOMなどが勢いを増しています。これらは評価経済と呼ばれています。

さらに、ブロックチェーン技術を用いると、それまで国家が担ってきた通貨の発行は企業や個人でも可能になります。トークンエコノミーといわれる、独自の経済圏を作る仕組みです。

トークンエコノミーでは、特定のネットワーク内で流通する独自の通貨をトークンとして生産者が発行して、完全に独自の経済圏を作り出すことができます。国家がやってきたことの縮小版を、トークンを用いて企業や個人が手軽にできる仕組みです。トークンエコノミーでは、経済圏への参加者が増えれば増えるほど経済圏としての価値が上昇する「ネットワーク効果」が働きます。

佐藤航陽著『お金2.0』(P124,P127より引用)

 

次世代の成功モデル「自律分散」

これからの世界において、分散化と並行して加速するのがディープラーニング、 AI を用いた知的労働の自動化です。今後、分散化と自動化の混ざった「自律分散」というコンセプトが次世代のビジネスモデルになると著者はいいます。
すでに海外では、Numeraiという無人ヘッジファンドや無人コンビニなどが成功を収めています。

 

経済は「住む対象」から「作る対象」に変わった

今世界で起きているのは「経済の民主化」なのだと著者は述べています。
かつて一部特権階級が独占していた「知識」が活版印刷とインターネットによって民主化したのと同じようなことが、今後経済においても進んでいくというのです。

新しいテクノロジーの発達によって、住む対象ではなく「作る」対象に変わりつつあります。かつて、経済を作るのは国家の専売特許でした。造幣局を作って金銀銅から硬貨を製造し、脾臓が難しい技術を織り込んだしヘイを大量に発行して、中央銀行が通貨供給量コントロールするなど、経済を作るには莫大なコストと権力が必要でした。今はスマホやブロックチェーンなどのテクノロジーを使えば、個人や企業が簡単に通貨を発行して自分なりの経済を作れてしまいます。現代で「知識」そのものがコモディティ化されたことと同様に、「お金」そのものもコモディティ化し、今ほど貴重なものとは考えられなくなることが予想されます。

佐藤航陽著『お金2.0』(P142〜P144より引用)

 

経済は選ぶものになる

経済が作れるようになると、複数の経済圏から参加する経済を選ぶ未来がやってくると著者は主張しています。「経済を選ぶ」とはどういうことでしょうか。

 

いま世界で起きていること②「価値主義」の台頭

今世界は資本主義から「価値主義」へと変容する渦中にあります。

出典:shutterstock

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資本主義は限界にきている

現行の行き過ぎた資本主義に対する懐疑心や違和感が広まっています。金融市場が実体経済とかけ離れすぎたことに対する嫌悪感です。

お金はそもそも、価値の交換・保存・尺度などの役割を担うものでしたが、現在では「お金を増やす」という手段の目的化が進みすぎてしまいました。

本来、私たちが労働をして給料をもらいお店でものを買いお金を払う、という消費経済こそが実体経済といえます。しかし世の中に流通しているお金の流れの9割近くは、お金からお金を生み出す「資産経済」から生まれているのだそうです。投機や金融商品にお金が集まり、お金がお金を呼んで膨張し続けている状態です。

しかし人々は消費から離れつつあり、実体経済である消費経済が縮小をしているので、消費経済からの金利や手数料で成り立つ資産経済は、非常に不安定な状態に陥っているのです。世界中で金融マネーは投資先を探してさまよっています。

もう利回りの良い金融商品などなくなってきているため、お金はあるけれど使う対象がない状況なのです。

 

資本ではなく、価値が中心になる

資本主義の発達によってお金の重要性が増していき、世の中の人が感じる価値と無関係にお金だけが増えた結果、お金の価値は相対的に下がり続けました。逆に信頼、時間、個性といったお金になりにくいものの価値が上昇しているのです。

つまり、今起きていることは、お金が勝ちを媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということです。価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなっています。
価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていきます。「価値」とは商品のようなものであり、お金とは商品の販売チャンネルのひとつみたいなものです

佐藤航陽著『お金2.0』(P154〜P155より引用)

 

価値とは何か 3つの分類

ではお金に変わって上昇している「価値」とはなんでしょうか。筆者は3つに分類しています。

1. 有用性としての価値
現在の資本主義が扱う価値であり、役に立つか? という視点で考えた価値のことです。言い換えれば「儲かる」もの、資本に転換できるものを指します。

 

2. 内面的な価値

愛情・共感・好意・信頼など、生活に役に立つわけではないけれど、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす時に、価値があるという表現を使います。

佐藤航陽著『お金2.0』(P166より引用)

美しい景色を見たときや、友達と過ごして楽しかったときに感じる価値です。

 

3. 社会的な価値
個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動に対する価値です。砂漠に木を植えたり、発展途上国に学校を作ったりする活動は社会的な価値の代表例といえます。

 

内面的な価値が可視化される

これまで資本主義が扱ってきたのは有用性としての価値でした。しかし現在、共感や感謝など内面的な、目に見えないものの価値や社会貢献活動の価値が高まっています。

SNSでバズを生むインフルエンサー。SHOWROOMで支援されるアイドル。クラウドファンディングで資金調達する社会活動家。これらはみんな、有用性という価値尺度では測れない、新しい基準によって支持を集めています。

そして目に見えなかったこれらの価値が、フォロワー数や支援額といった数字に置き換わっていきているのです。レターポットなど、すでに内面的な価値にフォーカスしたサービスも誕生しています。

内面的な価値も数字のデータとして認識できれば、それらは比較することができ、かつそのデータをトークン化することで内面的な価値を軸とした独自の経済を作ることもできます。

佐藤航陽著『お金2.0』(P171より引用)

 

新しい経済と既存の経済は並存し、選べる

ここまで書いてきたように、いま世界中で拡大している「新しい何か」の正体は「新しい経済システム」であり「新しい価値尺度」であるといえるでしょう。

このような変化が起きると、共産圏の国が資本主義へと生まれ変わるときのような、価値観が上塗りされるような状況を想像してしまいがちです。しかし新しい経済システムが誕生したからといって、古いシステムが廃用になるわけではありません。

筆者は既存の経済と新しい経済は並存し得ると断言しています。今の経済で優位な立場にある人にとっては新しいシステムは必要ありません。窮屈に感じる人にとっては新たな仕組みは歓迎すべきものです。置かれた状況や立場、属性によって最適な答えは変わりますが、選択肢が増えることは自由の拡大を意味します。所属する経済圏は選べるのです。

ネットが十分に普及した世界では、「どれが一番正しいのか」という考え方ではなく「どれも正しい人によって正解は違う」という考え方が徐々に受け入れられてもいいはずです。
何に価値を感じてどんな資産を蓄えどんな経済システムの中で生きていくのかも自分で選んで自分で決められるようになっていく私たちはその過程にあります。そこでは優劣を決めようとしたり自分の基準を他人に押し付ける必要は全くなく、ただ個人が自分に最も適した経済を選んで行くという「選択」があるだけです。

佐藤航陽著『お金2.0』(P189より引用)

 

まとめ

経済システムそのものが多様化し、人々は複数の経済圏から自分にあったものを選ぶ。そんな時代がやってきます。ビットコインに対する評価が賛否まちまちであるのと同じように、何を許容し、何と決別するのかを選べる。それが「お金2.0」の示す新しい世界です。

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』
著者:佐藤 航陽
出版社:NewsPicks Book

ライター : ユウキビート

oyako

1985年神奈川生まれ、仙台在住。
大学卒業後、不動産ディベロッパー、製薬企業を経て友人と独立。営業、経営、広告、DTPなどを担当。同時にライター/ブロガーとして活動を開始する。お笑い、競馬、ブラックミュージック、映画、漫画、小説が好きなおじさん。趣味は友達とアホな本を作ること。特技は物忘れ。海辺の小さな町でわんぱくな息子と愛犬に圧倒されながら暮らしている。

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