【どう思う?】「若者のスナック離れ」を嘆くオジサンたちと、なんで嘆いているのかよくわからない若者たち

その数はコンビニの2倍で全国に約10万軒もあるといわれるスナック(スナックバー)。かつてはカラオケの登場で大流行した時代もあったが、今では毎年着実に数を減らしているという。
カラオケボックスの増加、ママの高齢化で廃業、ウイスキー離れなどが主な理由だが、とりわけ20代、30代の男性客がなくなっている。
……と、こんな前フリから始まる『日刊ゲンダイDIGITAL』が発信した、とある記事がネット上でプチ炎上しちゃっている……らしい。
「1人で生きていける時代ゆえ スナックに行かない若者たち」といったタイトルで、もはや「メインの読者層は60代以上」ともささやかれている日刊ゲンダイが導き出した「若者のスナック離れの原因」が、ネット住民の一部ヤング層の癇に障ってしまったようである。
さて。論争の決着はいかに……?
「いまの若者は自ら人間らしさを放棄しているも同然」の一言が火ダネとなって…?

出典:shutterstock
とりあえずは、今回日刊ゲンダイ側の“語りべ”として「若者のスナック離れ」を嘆く、スナック好きの酒場ライター・小石川ワタル氏による“問題の言”を紹介しておこう。
「若者がスナックに行かないのは、“1人で生きていける時代になった”からだと思う。オジサン世代がスナックに通ったのは、飲みながら仕事の愚痴から失恋の話までできたからでしょ。店の女性が話し相手になって人恋しさも満たしてくれた。
ところが、今の若者は職場で困ったら辞めちゃうし、フラれるのが嫌だから恋愛はしない。会社を出たら1人で飯を食い、買い物も遊びも友人のやりとりもスマホ1台で完結してしまう。他人に接しないで生きていけるわけ。そういう男が増えている。戦後、何十年もルバング島で暮らした小野田寛郎サンは、“人って人の中にいてこそ人だ”と名言を吐いたけど、いまの若者は自ら人間らしさを放棄しているも同然。残念だね」
「(今の若者はスマホ1台でなんでもできるから)他人に接しないで生きていけるわけ。そういう男が増えている」あたりで止めときゃ、「まあ、言われてみたらそうかもしれないな…」で済んだんだろうけど、よりによって私世代(=50代)ですらギリギリでしか馴染みのないルバング島の小野田サンの“名言”まで引っ張り出して「いまの若者は人間らしさを放棄している」「残念」とまで言い放ってしまえば、そりゃあ“言い放たれた側”が気分を害するのも無理はない。
『痛いニュース』という名のネット掲示板で、同記事は“晒し首”となり、2月27日の時点で
スナックって何よ
スナックってババアばかりだろ
すげー入りづらい
うっすい水割り一杯で3千円のイメージ
若者がスナック好きだった歴史なんてないだろ
……ほか諸々、1200ものコメントによってサンドバッグ状態と化している。
知らないおばさんたちと話をして歌を聴かされて、なにがうれしいのか!?

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こうもスナックは若者たちから敬遠されつつあるのか……? 30代の知人男性に、その真偽を訊ねてみたところ、以下のような“にべもない回答”が返ってきた。
「20代のころ、興味半分で当時住んでいたエリアの繁華街にあったスナックに、少し年上の先輩に連れられて2度ほど行ったことがあるんですが、なにが楽しいんだかまったくわかりませんでしたね。
女の子と飲みたいのならキャバクラやガールズバーって選択肢があるし、カラオケがしたいなら、あえてスナックに行かなくても……。カラオケは友だちと楽しむものであって、知らないおばさんたちと話をして歌を聴かされて、なにがうれしいんだろうと思うんです。
見た目にも問題があります。よくあるスナックって、木製のドアで窓はないか、遮光のカーテンがかかっていて、外からだと店内が見えないイメージ。そこから変な歌声とかが聞こえてきたら普通は入らないですよ。常連ヅラした近所の泥酔オヤジがおばさん相手にくだ巻いて飲んでそう。そんなのに万一カラまれでもしたら絶対に面倒臭い。
もちろん、スナックに可愛くて若い女の子がいるなら行っちゃうかもしれません。でも、まずいないでしょ。だいたい、このご時世にキャバでもガールズバーでもなく、スナックに働き先を求める女の子ってどうなんです? もし若い子がいたとしても、オジサン好きか、キャバで一匹狼として戦える実力がないからママに守られながらスナックで働きたいっていう子……とかじゃないんですか? わざわざそんな子を求めて行くほど飢えてないし……。
そもそも『若者のスナック離れ』って言いますけど、それは別に、今に始まったことではなく、僕の知っているかぎりでは、20年前ぐらいからすでにそうだったのでは? だって、まわりには一人もいないですもん。スナックに通ってる(た)ヒトなんて……」
じつのところ、20年ほど前に私は日刊ゲンダイの記者をしていた経験があり、結果としては「古巣にトドメを刺す」ようなインタビューをここに掲載してしまったわけだが、最後に私のスナックに対する個人的な見解を述べて、このコラムの〆にしたい。
「昭和レトロ」の一つとして、スナックはたしかに情緒深く、フォトジェニックでもある。たとえば、著名な写真家で編集者兼ジャーナリストでもある都築響一さんは長年あらゆるスナックを取材し続け、それを素材とし、素晴らしい写真集も出版している(その写真集を賞賛する原稿も私は書いたことがある)。
が、私は「ちゃんと食わなきゃ飲めないタイプ」だというシンプルな理由だけで、基本は乾きモノと謎の煮付け……みたいなおつまみしか出てこないスナックは、どうも苦手なんである。古巣にもっとトドメ刺しちゃいましたね(笑)。日刊ゲンダイさん、ごめんなさい!
ライター : 山田 ゴメス

1962年大阪生まれ B型 関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、偏った幅広さを持ち味としながら、阪神タイガースと草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター&イラストレーター。『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』ほか、著書は覆面のものを含めると30冊を越える。
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