日本復活の鍵はブロックチェーン的国家と東洋型イノベーション! 落合陽一 日本再興戦略レビュー

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テクノロジー企業の経営者、国際会議で論文を発表する研究者、アーティスト、国立大学准教授など様々な顔を持つ「知の巨人」落合陽一氏。

2018年1月31日に発売された『日本再興戦略』で著者は、大化の改新から高度成長、現代に至るまでの統治体制や時代背景と民衆の価値観の移り変わりをひもづけたうえで、いま日本が抱える課題をあぶり出し、思想・政治・経済・教育・会社・仕事・テクノロジーを横断する「日本型イノベーション」のグランドデザインを提案しています。

日本はこの先の世界において、再び経済的、文化的に各国をリードする存在になれるというのです。そのためには日本社会がマスメディアの作り出した昭和的世界観と決別し、コミュニティを再構築し、価値観をアップデートする必要があります。

旧世代の教育を受けた人々が今後の世界に適応するために「どうやってものを考えたらいいか」という基盤を習得しないと、国も企業も個人も新しい時代を生き抜けません。
日本を再興するため、世界を理解するために重要なのは「意識改革」です。集団に対する処方箋としての教育とテクノロジー、それを通貫するビジョンが必要なのです。

落合陽一著『日本再興戦略』(P14より引用)

本書で語られるアップデートには大きな2つの基軸があります。「西洋思想傾倒からの脱却」「非中央集権化=ブロックチェーン型国家への転換」です。

西洋思想傾倒との決別

日本再興戦略1 

日本は明治維新以降、国策によって近代化を果たしました。その過程でさまざまな国のシステムや法律を模範とし、組み合わせていいとこ取りをしてきました。しかしいま、時代の変化によりいいとこ取りが悪いとこ取りになり、齟齬を起こしていると著者はいいます。

日本の歴史と伝統をひもとくと、明治以降に輸入された欧州や米国式の概念のなかには日本に合わないものも多くあるというのです。そのような外来的な考え方のいくつかを超越、脱却しなければ日本型のイノベーションは起こり得ません。

 

公正と平等

日本人は公正にこだわり平等に無頓着です。たとえばセンター試験でカンニングなど不正が発覚すると騒動になりますが、そもそも公教育に地域格差があることに文句を言う人は少ないままです。ゲームがフェアであることは意識しますが、権利が平等であることは意識しません。

こうした特徴は、民族的に日本人が以前から持っているものではないかと思います。江戸時代の士農工商という考え方はそもそも権利や地位の平等に反しています。それなのに当時の社会は士農工商に対して違和感をさほど抱いていなかったはずです。つまり、ゲーム盤の上の不公正、不公平な裁きは気になるくせに、士農工商のような不平等問題にはあまり目を向けないのです。

落合陽一著『日本再興戦略』(P34より引用)

もともと不平等な階級社会で生きていた日本人にとって、平等な権利という概念を考えること自体が苦手なのだそうです。たとえば男女の合コンや飲み会で男性が多く払うのは当然という風潮がありますが、これは男女平等の権利意識が欠けている事例であるといいます。逆に欧州のように要職の一定比率を女性にする法律が定められたら「公正でない」と抗議があるはずです。著者はこれら伝統的な気質を強引に是正するのではなく、欧州や米国で正しくとも日本には合っていないものがあると認めることが重要と説きます。

今日本に求められる平等と公平とは、適材適所をきちんと肯定できるロジックと、それに齟齬が発生した場合に制度自体を変更できるようなフットワークの軽い発想です。全てを50:50にする間違いの平等意識を正し、最適な割合を常に探す臨機応変さを制度に組み込むべきなのです。

落合陽一著『日本再興戦略』(P35より引用)

 

個人主義

「近代的個人主義」も日本に合わない考え方といいます。「近代的個人主義」とは西洋的思想に立脚した、個人が全知全能の神にどこまで近づけるのか、最強の個人を目指せるかという主義のこと。著者によれば、欧州や米国は人間個人の権利を最大化しようと個人に平等に権利を与えた結果、 「部分と全体の間」を修復できなくなっているといいます。近年の世界的なポピュリズムの台頭は「集団のなかで個人は正しく判断できない」ことを顕著に示しているというのです。

日本でも1860年から150年以上、欧州・米国式の「個人」を目指し続けてきましたが、個人による国家という感覚は薄いままに孤独感だけが強まっているのではないかと、著者は指摘します。要因として、日本人のなかに息づく東洋的思想を挙げています。

日本人は、どこまで行っても自然の中にある同質性・均質性にひもづいています。律令の「近代政策」をとって前近代化を行なったかと思えば、今度は再び伊勢神宮のようなシステムを持ちうる。自然のエコシステムとの距離感を保ちながら暮らしていくという思想です。

落合陽一著『日本再興戦略』(P38より引用)

東洋思想は、山林などの文字通りの自然だけでなく、人間も自然であり、自然の産物である人間が起こしている戦闘状態をも自然であると考えます。日本では太古から自然発生的に経済をまわして、誰が中心でもないコミュニティをつくりました。長屋に住んでコミュニティや他人に依存しながら、個人という概念がなく、権利が与えられなくても江戸時代のように戦争をせずに生きた時代もありました。

そこにいきなり西洋的なコミュニティ発想を取り入れたり、誰かに局在的な権利を与えたりする必要はなかったのです。これからの日本人にとっては、西洋的人間性をどうやって超克して、決別し、更新しうるかがすごく重要なのです。過去150年ぐらいにわたって日本が目指してきた、西洋的人間観と文化との齟齬にどうやって戦いを挑むかという問いに直面しているのです。

落合陽一著『日本再興戦略』(P38より引用)

解決策はシンプルで「個人」として判断しないこと。「僕個人にとって誰に投票するのがいいか」ではなく「僕らにとって誰に投票するのがいいのだろう」と考え、属するコミュニティの利益を考えて意思決定すればよいのだそうです。

 

愛と幸せ

ときに私たちは「幸せを求め、手にいれなければいけない」という焦燥感に支配されています。著者によれば「幸せ=ハッピー」という概念も明治以降に輸入された概念だそうで、それまで「幸福(幸=ハッピー&福=ラッキー)」と呼んでいたものからラッキーが抜け落ち、「幸せにならなければいけない」と信じ込むようになったのだそうです。

何かを求めているけれども、それが足りないという状態は、実は依存症です。別に、自然でいればいいのに、メディアの定義した幸せを探す日々の中で、日本人はいつのまにか「幸せ依存症」になってしまったのです。

落合陽一著『日本再興戦略』(P45より引用)

同様に「愛」も明治以降に入ってきたものといいます。日本にもともとあるのは「きずな」の概念。愛ときずなの違いは愛が感情なのに対し、きずなは状態であるという点。西洋の老夫婦は年老いても愛を語る美しさがありますが、静かに佇む日本の夫婦のきずなもまた美しいのです。

こうした西洋的概念の訳語が時代にあっているものかということも含め、東洋思想を学ぶべきと繰り返し伝えています。理解がないと「我々は幸福であるべきか」というコアのない議論にはまってしまうというのです。こうした個人主義に基づく問い自体が日本には馴染まないともいっています。

 

士農工商制度への回帰

西洋からの脱却の具体策としては、士農工商制度のリバイバルを挙げています。士農工商の序列はコンピュータ時代にも価値を持つ、いい並びなのだそうです。

【現代の士農工商分類表】

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百姓=多動力的な生き方ができる人

上記の表のとおり、筆者のいう百姓とは単なる農民のことを指すのではなく、「生業が100個ある人たち」です。もともと「農」に属する人たちは米作り以外にもたくさんの仕事をしていたのだといいます。これから多くの職業がAIに置き換わる時代が来たとき、生き残り食いっぱぐれないのは何かを生み出せる人であり、柔軟に100の生業を成すことを目指している人なのだそうです。複数の仕事をすることで、コモディティ化(市場価値の低下)のリスクを回避できます。筆者は「多動力こそ百姓」と表現し、現代でいう代表的人物に堀江貴文氏を挙げています。

逆に「商」、メガバンクをはじめとする金融業界のホワイトカラーなどの職種はクリエイティブではなく、拝金主義によって「商」が必要以上に持ち上げられる現状は健全でないといいます。そして今後機械に置き換わる可能性が高いのも商であり、だからこそ「士農工商」の順列は正しく機能的だというのです。そして士農工商制度によって生業が保証されることが、これからの時代の幸福に繋がるとも論じています。

 

中央集権からブロックチェーン型国家へ

日本再興戦略2

政治のあり方としても、明治以降の西洋的な体系が足かせになっていると著者は述べています。いまの日本の統治構造は中央集権ですが、これが日本の伝統にはそぐわないというのです。筆者は中央集権国家と非中央集権国家の象徴として以下の例を挙げています。

中央集権=秀吉的世界 →自由経済的なオープンな世界で外交的成長を推進
非中央集権=徳川的世界→地方自治と内需に頼る鎖国戦略

ご存知のように、秀吉は朝鮮出兵など外に目を向けましたが天下は続かず、一方の徳川幕府は300年に渡り平和な時代を築きました。このような歴史的背景からも、四季や文化、地形、自然が異なる地理的な特色からも、日本に向いているのは地方分権スタイルであり、今後の統治構造として取り入れるべきと著者は主張しています。

昨今話題のブロックチェーンは分散型記録台帳と呼ばれ、中央管理機関を持たずにデータを複数のブロックにわけて管理する技術です。いうなればブロックチェーン的な国家こそ、これからの日本が目指すべき統治の姿であると著者はいいます。

地方自治がどのような形で進むにしろ、自治を行う最適な人口単位は10万人〜100万人ぐらいでしょう。もっとも重要な行政単位は、 市や県です。
今後、日本を変えていくときに、最初にやるべきことは、そういった地方自治の首市長連合組み、時代性とテクノロジーの合わさる点で、今、何が可能か考えることです。地方自治のモデルケースとなる市がどれくらい生まれて、集まれるか。そこに勝負がかかっています。

落合陽一著『日本再興戦略』(P45より引用)

すでに福岡市では市のレベルで起業家を増やしています。このような自治体が増えていくと、地方を起点とした国家のアップデートが進むのです。

著者は地方自治における具体的なプランや導入を推進すべき技術や思想も提示しています。ひとつは先ほども述べたブロックチェーン(技術・思想双方の意味で)。次にトークンエコノミー。そしてトークンエコノミーの具体策としてのICOです。

 

トークンエコノミーによって「小さな経済圏」をつくる

日本再興戦略3

非中央集権的なテクノロジーの代表格がブロックチェーンであり、その技術を用いたのが仮想通貨です。これからの世界では仮想通貨のように、その価値を信じる人だけで成立する経済圏が重要になります。この経済圏を筆者は「トークンエコノミー」と名付けています。

今までは、中央銀行が発行した通貨を中心とする、中央集権的な経済圏しかありませんでした。それに対して、トークンエコノミーが普及すれば、非中央集権的に様々な経済圏を作ることができるようになります。

落合陽一著『日本再興戦略』(P167より引用)

 

ICOで自治体が上場する時代へ

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株式市場では、株式公開することを IPO( 新規株式上場)といいますが、仮想通貨の分野では、 ICO(イニシャル・コイン・オファリング)という上場の方法があります。
この手法を使えば、証券会社の介在がなくとも、ある程度自由に上場することができます。
市や県、国だって上場していい。実際に、欧州のエストニアは国自体をICOして話題になりました。

落合陽一著『日本再興戦略』(P167より引用)

地方自治重視へと舵を切るとき必ず問題になる財源。これを解決するカギとなるのがトークンエコノミーでありICOだというのです。

地方自治体そのものをトークン化して、 ICOすればいいのです。わかりやすい例でいうと、沖縄県が沖縄トークンを発行すればいいのです。ICO することで、地方自治体はお金を集めて、攻めの投資を行うことができるようになります。
トークンエコノミーとは、いわば 、将来価値現在価値に変換する仕組みです。沖縄トークンを例にすれば「皆さんのお金を使って、沖縄をこんなふうにつくり変えて、経済を成長させます」という説得力のあるビジョンを描ければ、期待に対してお金を集めることができるようになります。

落合陽一著『日本再興戦略』(P171より引用)

トークンエコノミーの考え方、手法が広がれば、優れたビジョンのある自治体ほど株価が上がっていきます。 例えばすでにベンチャーが次々誕生している福岡市がICOしたなら、投資も集まり、財源的に中央政府から自立することができるのです。

さらに自治体同士でそれぞれのトークンを買いあって価値を高め、世界の投機マネーも惹きつける。そのお金をロボット、自動運転、5Gなど次世代テクノロジーに投資すれば、日本全体がアップデートするのだといいます。焦点が地方自治に向くことで国民の参政意識、帰属意識も高まります。

また少子高齢化はネガティブに捉えられがちですが、著者によれば人口が少ないことで、自由化や省人化に対する打ち壊し運動(産業革命時に起きた機械への反対運動)が起きにくく、少子高齢者対策技術を世界へ輸出できるなど、むしろチャンスであるといいうのです。トークンエコノミーやあらゆるテクノロジーをうまく活用することで、日本再興の道は開けると著者はいっています。

 

まとめ

1ページに含まれる情報の密度が濃厚な本書は、この記事で触れなかった項にも目から火が出るような知見がびっしりと記されています。例えばテクノロジーが今後どのように世界を変えていくのかということ。そして教育と政治のアップデートに関すること。分野、職種を問わずさまざまな人に気づきをくれるグランドデザインが提示されています。日本の未来に希望を見いだせる名著です。

『日本再興戦略』
著者:落合陽一
出版社:NewsPicks Book

ライター : ユウキビート

oyako

1985年神奈川生まれ、仙台在住。
大学卒業後、不動産ディベロッパー、製薬企業を経て友人と独立。営業、経営、広告、DTPなどを担当。同時にライター/ブロガーとして活動を開始する。お笑い、競馬、ブラックミュージック、映画、漫画、小説が好きなおじさん。趣味は友達とアホな本を作ること。特技は物忘れ。海辺の小さな町でわんぱくな息子と愛犬に圧倒されながら暮らしている。

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