【常磐線開通】変わらぬゴーストタウンと変わりゆく「フクシマ」 ~女性写真家「星野藍」が見た福島県浪江町と富岡町の現在

浪江ゴーストタウン
文:星野藍
グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。

3.11「東日本大震災」

3月11日。

それは私の父の誕生日だ。

2011年3月11日。
何事もなく、毎年のように「おめでとう」と言う筈だった。しかし。
東日本大震災……未曾有の大災害がその日、突如襲いかかった。

巨大な津波により東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらし、震災による死者・行方不明者は18,449人、建築物の全壊・半壊は合わせて400,827戸となった。

私の実家は内陸部にあった。それでも知り合いの友人が、友人の親戚が……たくさんの悲劇が身近にあった。

あれから6年後の4月1日、避難指示が解除された地域で一部、JR常磐線が運行を再開した。浪江駅〜小高駅間の短い8.9kmの区間だ。常磐線の残る不通区間は代行バスが運行を続け、2019年度末までに全区間運行再開を予定している。

そして先月、2017年10月21日にはいわき〜富岡間が開通した。今年最後の帰省をしていた自分は折角だから開通した常磐線の様子を見に行く事にした。

 

福島市から114号線を走らせて

私の地元福島市から浪江町へ。114号線を走り山を越えていく。福島市の人間は、何かと出不精な人が多いように見える。私の周りだけかもしれないが山を越えるとなると出掛ける事が億劫になるようだ。

「気をつけてね。」母がいつものように心配そうに声をかけた。

確かに浪江町へ向かう道は良いとは言えない。狭い道だがスピードを出すドライバーが多く、急なカーブが連なる山道は人によってはやはり嫌悪するものだろう。

川俣町という町へ差し掛かった時、2年前通りがかった時は存在していなかったものが目に入った。

ソーラー

最近田舎でどんどん数を増やしているソーラーパネルだ。

私のライフワークである廃墟撮影も最近ソーラー発電所には頭を悩ませていたりする。廃墟が解体され更地と化し、そこのソーラーパネルが敷き詰められてしまうのだ。正直景観も美しいものとは思えない。

フェンス

使用年数が過ぎ劣化したソーラーパネルの処理の方が原発よりも身近な問題にも感じてならない。

どのう

そして道路を挟んで向かいには、汚染土が詰まったフレコンバッグの山。こういった光景は、福島では珍しいものではない。

114号線をそのまま走っていくと、浪江町の津島地区というエリアへ入っていく。嘗てそこは、立ち入りが禁じられていた。通行許可証がなければ通る事が出来なかったが、現在道路は解放されそのまま太平洋側まで抜ける事が出来る。

まち

しかし、ここはまだ帰宅困難区域だ。人が住む事は出来ない。

albumtemp (3)

津島小学校

114号線そのものが封鎖されていた頃はこんなバリケードはいちいち設置されていなかった。しかし誰でも走る事が出来る今、必要不可欠なものとなっている。パトカーの巡回も行われている。太平洋側に抜けるまで何台見た事だろう。

廃墟家

津島地区は山に囲まれた地域だ。津波の影響はない。しかし原発事故後の風向きの関係で、放射能汚染が格段と酷い地域になってしまった。今でも空間線量は高い、この日は4.9マイクロシーベルトだった。初めて津島地区へ足を踏み入れ取材したのが2013年。その頃と変わらぬ数値だ。うねうねと延々続く山道を抜け、浪江町の中心・浪江駅へと到着した。

 

浪江駅へやって来た

浪江駅前

約2年ぶりに訪れる浪江駅は、これと言って変わった様子はなかった。

浜通り(福島では太平洋側を浜通り、内陸部を中通り、会津方面を会津、という風に3つに分けている)は相変わらず風が強い。春でも夏でも秋でも冬でも、強い風が吹かぬ日などなかった。

albumtemp (1)

あ、本当に開通している。初めて訪れた時、浪江駅は廃墟状態だった。このままもう、ダメになるかと思っていた。

浪江駅構内

駅構内は灯りがつき、駅職員の方もいる。絶望そのものだった浪江町を見てきた者からすると、それは奇跡のように思えた。

浪江駅路線図

原発からほど近い双葉駅、大熊駅は流石にまだ再開していない。本当に2019年年度末までに、全区間運行再開となるのだろうか。

 

浪江駅周辺を歩いてみる

浪江ゴーストタウン

久しぶりに訪れた浪江町の駅周辺を歩いてみる。人っ子ひとりいないゴーストタウンなのに、信号だけは煌々と機能している。風が轟々吹きすさぶ音、消防車の警報の音、人の営みはそこから感じられない。

浪江駅ゴーストタウン2

荒廃した景色がそこに在り続ける。

浪江新居

浪江更地化

しかし、更地が増えた。廃墟化し崩壊した建築物は今、次々と解体されている。

albumtemp (6)

解体中

この時の空間線量は0.5マイクロシーベルト。かなり低くなっている。

横断歩道

細い路地や細々とした街を見ていると気の滅入る景色はまだまだ数多く残るが、大通りは驚くほどきれいに整備されている。

綺麗な道路

新しい家

そして新しい家が建てられている。

albumtemp (2)

季節が巡る度、次々と、着々と、復興は進んでいる。実のところ、2013年から追いかけていた『フクシマ』からやや足が遠のきがちになっていた。現実を見つめ続ける事に漠然とした疲労を覚えてしまった事、とある悲しい事件があった事、家族を取り巻く環境が変わった事。……理由は様々だ。

でもこの日を境に、そういった負の気持ちは払拭されたような気がする。

浪江街並み

次に浪江町へ訪れる時は、どう変わっているだろう。

 

開通したばかりの富岡駅へ

富岡駅

浪江町へ名残惜しさを覚えつつ、6号線を南下し富岡駅へと向かう。津波により崩壊した駅は痛々しく、目を背けたくなる惨状だった……が、約1年半ぶりに訪れたそこは新しく生まれ変わっていた。

富岡駅2

駅のすぐ近くにはビジネスホテルも出来ていた。10月17日にオープンしたばかりの富岡ホテル。震災前富岡町で様々な商売をしていた町民の男性8人が経営する。“フクシマ、最前線”のキャッチコピーを掲げ、駅周辺の賑わいや観光に繋がる事が期待されている。

KINONE

駅の隣にはコンビニ・お食事処のさくらステーションKINONE。店名の由来は富岡町の木である桜と、木の根のようにしっかりと根を張り今後も復興を進めていくという思いを込めた事による。折角なのでお昼ご飯を食べていく事にした。

KINONE内部

かき揚げそば、ビーフカレー、カツ丼など、簡単ながらもお腹にしっかり溜まる嬉しいメニューが揃っている。

うどん

私が注文したのはさくらうどん。美しく色付いた桜色のうどんは、細身ながらもつるんとしっかりコシがある。美味しい! お土産用で販売していたら絶対購入していた。

albumtemp (4)

お腹もいっぱいになったところで駅構内を見てみる事にした。

富岡駅構内

新しい富岡駅は浪江駅よりも開放感を感じる作りになっている。

富岡駅ホーム

立派になった駅ホーム。流された当初は、こんなにも早く復興するなどとは想像もしていなかった。

富岡駅向こう側

しかし、線路を挟んで向こう、海の方を見るとはっとなる。

富岡駅フレコンバック

フレコンバッグだ……。

仮説貯蔵施設

「あの建物はなんだろうね?」

老夫婦が不思議そうに眺めていた。あれが仮設貯蔵施設だという事実は、余りに知られていないのかもしれない。

albumtemp

富岡駅の空間線量は0.07マイクロシーベルト。人の営みがある場所は、それだけ除染も行われる。電車に乗らなくても、新しい富岡駅に訪れ見学、食事をしに来る人々は絶えなかった。

富岡駅ホーム2

そうこうしているうちに、常磐線がホームに入ってきた。

富岡駅常磐線

常磐線が走っている。草が生え荒れるが侭になっていた線路。津波に流され崩壊し誰もいなくなった駅。花と酒が大量に手向けられていた慰霊碑。

物悲しく心が引き裂かれそうな程見ていて辛い光景だった。それが、今。

富岡駅常磐線2

富岡から先は、まだ再開していない。折り返しいわき(または水戸)へ電車は向かう。

富岡駅常磐線内部

今度来る時は車ではなく、東京から電車で来てみよう。

 

富岡駅周辺を歩いてみる

富岡駅周辺

富岡駅からすぐのところに、本来なら商店街があった。津波が街を襲った後住民は避難し、暫くゴーストタウンとなっていた。その商店街も解体され今では真新しい広い道路となっている。

富岡駅周辺の新築

何やら賑やかな放送が聴こえる。聴こえるその先を目指し私は歩き出した。綺麗な一軒家が見える、富岡には人が、思った以上に戻ってきている。

富岡駅周辺の祭り

賑やかな放送の正体は第89回富岡えびす講市。大正12年から続く伝統的な秋市だ。五穀豊穣や大漁、商売繁盛を願って始まり、商店街には約160の露店が並び、大勢の人で賑わった。

平成22年11月の開催から途絶えていたが、7年ぶりの再開となっていた。11日の夕刻からは、竹灯籠の点灯、花火の打ち上げがあったらしいがこの日は残念12日。しかし偶然立ち寄れただけでも幸せだ。

albumtemp (5)

お供え物

屋台

出店も数多くあったが、うどんでお腹いっぱいになっていたので買い食いは断念。

すぐ近くの公民館のような施設で地域の子供達の絵画や書道の展示、そして富岡町の古い写真や食器などが展示されていた。富岡町がかつて宿場であった事も、この日初めて知った。

「富岡には300〜400人は戻ってきていますよ。」居合わせていた地元男性が言った。

「夜になると思った以上に灯りがついていて、わぁ、戻ってきてる! って実感が湧くんです。」

 

6号線を北上する

もう少し長居したかったが、夜から家族との約束があったので福島市へ戻る事にした。来た道を戻る、6号線を北上する。

交通封鎖

かつて双葉町にあった“原子力 明るい未来の エネルギー”と書かれていた看板は、6号線を走っていれば必ず見える位置にあった。

2015年12月21日、それは街から撤去され姿を消した。標語を作った双葉町民の男性の「町の歴史を残して欲しい」という訴えは虚しくかき消えた……。

富岡はまけん

スクラップ&ビルドを繰り返し、日本の歴史は今日もまた刻まれていく。

福島の今後は、どうなっていくのか。足早に見て回って終わってしまったが、次はじっくりゆっくりと、浜通りのどこかに宿泊しながら回り記録に残したい。

 

『チェルノブイリ/福島』

チェルノブイリ

2016年、八画文化会館さんより、『八画文化会館叢書vol.06 チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』を上梓しました。

震災後、様々な想いを抱き訪れたチェルノブイリ。その後自ら赴く事を自粛していた福島の禁止区域へ。瑣末な個人的感情から始まった廃墟の旅は、いつしか海を越え廃墟という言葉の枠には留まらない場所へと飛ぶようになっていきました。

原発事故によって廃墟と化した、ふたつの土地。

普段語らぬ現実、言葉、想いが、写真として文章として、一冊に凝縮されております。過去となりいつか消え去ってしまうかもしれない記憶のひとつを残す事が出来た一冊です。

もしよければ、お手にとってご覧ください。アマゾンなどで購入出来ます。

『八画文化会館叢書vol.06 チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』
【著者】星野藍
【判型】A5
【発行】2016/08
【頁数】32P/オールカラー
【限定】1000部限定発売、シリアルナンバー付き
【価格】1,080円

ライター :星野 藍

星野

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。

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