【外来種天国-日本③】日本の生態系が崩壊危機!? ~アライグマの可愛らしさに隠された脅威&タヌキとの違いとは?

shutterstock_584724292
記事内の写真 / 文:里中遊歩 
東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。主な著書に「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」など。

昔から、ニッポンでは可愛らしい動物たちの象徴的存在の一種として扱われてきたアライグマ。最近でも、長野市にある茶臼山動物園のアライグマ『カール』くんが、「マンホールの蓋をきちょうめんに開閉する」ことでちょっとした話題となって人気を博しているようだ。

しかしこのアライグマ、本来ニッポンには棲息していない筈の外来種。しかも昨今では、ニッポン従来の生態系が、このアライグマによって壊滅状態にされてしまうのではないかという穏やかでない予測なども囁かれ始めている。そこで今回は、そんなアライグマの真実について迫ってみたい。

とその前に、本シリーズの第一回目となる以下の記事を先に読んで頂くことをオススメしたい。

【外来種天国-日本①】外来種の何がイケナイ!? 野生動物のプロが教える、外来動物の問題と人間たちの大罪

「そもそも外来種とはどんなもので、在来の動物たちにどんな影響を及ぼす危険性があるのか?」といった部分の基本的な話を記している。それを理解した上で、本編を読んで頂けると幸いだ。

アライグマとは?~タヌキとの違いや食べ物について~

アライグマは、食肉目アライグマ科に分類される中形の哺乳動物であり、その大きさは頭胴長が40~60cm程度、尾長20~40cmと、中型犬くらいの大きさだ。

古の時代よりニッポンに棲息していて時折町なかなどでも見かけるホンドタヌキ(食肉目イヌ科)に非常に近い体型をしており、大きさも同じくらいということで、「あっ、タヌキがいるぅー!」などと勘違いされてしまうことも少なくない。

ちなみに英語では、アライグマのことを“raccoon(ラクーン)”と呼び、タヌキのことは“raccoon dog(ラクーンドッグ)”と呼ぶ。まっ、そのくらい似ているということであろう。

23318941_141150919862045_448828568_n

<イラスト:小林尚暉>

本来はアメリカやカナダ、メキシコなどに自然分布してきた動物だが、現在ではニッポンを始めヨーロッパ諸国から西インド諸島などにも外来種として定着してしまったようだ。

食性は雑食。動物で言うと、ミミズや昆虫などの小さなものからカエルやザリガニ、ヘビやネズミなどなど、ほとんど好き嫌いなく捕まえられたものは何でも食べる。また木登りが得意なことから、カキやナシなどの果実もよく食べる。ヒトの食べ物もフツーに食べることから、町なかで生ゴミを漁る姿なども見られることがある。

カキの木に登って食べようとしていたところ、私たちに見つかってしまって途方に暮れるアライグマ

カキの木に登って食べようとしていたところ、私たちに見つかってしまって途方に暮れるアライグマ

寿命は野生においては10~16年程度と考えられ、繁殖力にも長けていて、雄は2歳、雌は1歳を超えると性成熟して繁殖が可能となる。春から夏にかけて一度に3~6頭の子どもを産むとされており、オオカミやヤマネコなどといった天敵のほとんどいないニッポンにおいては、子どもの生存率も相当に高いのではないかと考えられる。

 

どうしてこんなに日本で増えたのか? ~ご存知、あのアニメがきっかけに……

ニッポン国内で、最も古い「野生化したアライグマ」の捕獲記録は、1977年の岐阜県可児市。市内に住む住人が捕獲したものである。そこから遡ること16年の1961年、愛知県犬山市にある『日本モンキーセンター』から飼育個体のアライグマ12頭が脱走、そのうち10頭の捕獲はできたが2頭は捕獲できなかったという。

可児市は犬山市に隣接していることから、「その2頭が雌雄で繁殖し、その子孫では?」との憶測も立ったが、その真偽の程は定かではない。と言うのも1977年と言えば、中高年の皆さんならきっと誰でも知っているであろう『あらいぐまラスカル』が一年間TV放送され、大人気を博した年である。

放送が開始されると、たちまちラスカルに感情移入してしまった多くの人たちが「ウチでもアライグマを飼いたい!」となり、そんな儲けのチャンスを逃す筈のない業者たちによって年間1500頭くらいが輸入され、各家庭へと売られていった。更にはTVコマーシャルなどでも可愛らしい仕草をするアライグマが登用されたりして、一躍スターダムへとのし上がったのである。

ところが、だ。この可愛らしい筈のアライグマが、実は大変厄介な性質を持つ動物だったのだ。

確かに子どもの頃のアライグマは可愛いし、人懐っこくて頭も良い。しかし、1~2歳の成獣となると、相当な暴れん坊になってしまうのだ。勿論、本人(ヒトじゃないけど)からすればフツーにイタズラでもして遊んでいるだけのつもりなのだろうが、飼育者であるヒトからすると、イタズラでは済まない程のヤンチャぶり……、ちょっとした家庭内DVのような様相を呈してしまうのである。

23361252_141150956528708_1240764072_n

<イラスト:小林尚暉>

飼い主の手足には生傷が絶えず、また室内は、中高生くらいのヒキコモリ息子が暴れるせいでボロボロになった状態に近い有り様と相成ってしまうのだ。

きっと当時、多くの家庭で家族会議が執り行われ、「もうダメだ。これ以上は危なくて飼えない。でもだからって保健所とかに引き渡して殺すのは可哀想だから近所の山へ帰してあげよう」といった愛に満ちた結論が導き出されたのであろう。

まあ当時は、『外来種』というものに対する危機意識がほとんどない時代だったので、アライグマを野に放つことの罪悪感もなかったであろうし、「自然の中でノビノビ暮らせる環境を提供してあげるオレってエラい」といったように、むしろ放獣後に清々しい気分だったヒトもいたのかもしれない。

また、アライグマは頭がとても良くて手先も器用だったりするので、当時自ら脱走を図って成功した個体も多かったようだ。

いずれにせよ、そんなこんなで1977年を機に、ニッポン中の野山里山にアライグマが一斉に放たれていったのである。よって私は、勝手にこの1977年を『アライグマ元年』と呼称している。

忘れもしない、キャンディーズが解散し、王貞治が本塁打756本の記録を樹立した年のことである。その後、ニッポンの野山里山への適応を容易に果たしたアライグマたちは順調にその数を増やしていき、なんとそれから僅か31年後の2008年には、全国47都道府県での棲息が確認されることとなったのである。

アライグマ一頭の行動圏は凡そ1,000ヘクタール(10平方キロメートル)と考えられており、これは驚く程に大きな数値というワケではない。それでもこの短期間で全国制覇を成し遂げてしまったということは、やはり放たれた数が尋常ではなかったということ、そしてニッポンの野山里山には天敵が不在であることが大きく影響しているのであろう。

 

アライグマが増えることで生ずる問題とは!?

では、ニッポンにアライグマが増えることで、どのような問題が発生してしまうのか? そもそもその地にいる筈のない動物が棲息しているということだけで問題なのであるが、アライグマの場合はその程度が、他の外来動物たちと比較してもかなり重たい。

まず一番に挙げられるのは、ニッポンの生態系への悪影響だ。

ほとんどえり好みをすることなく様々な動植物を喰い漁ってしまうその食性、また木登りや水泳なども得意なことから彼らが足を踏み入れることのできない場所がほとんどないこと、そして時には猟犬でさえも仕留めてしまうその暴れん坊気質……。それはもう、ドラえもんのいない街中に多数のジャイアンがうようよ徘徊しているようなものである。温室育ちののび太などひとたまりもない。

樹上では、卵やヒナを狙われたアオサギやオオタカなどの野鳥が堪らずに営巣を放棄せざるを得なくなったり、フクロウがねぐらとして使っていた樹洞を略奪されたり……、といった事態も報告されている。また水辺でも、稀少な在来のカエルやサンショウウオ、カメ、サカナなどが犠牲となっているという多数の報告が確認されている。

勿論、私たち人間たちの自業自得とは言え、農業や水産業の被害も甚大だ。トウモロコシ、ナス、トマト、スイカ、メロンなどの食害、そしてコイなどの養殖魚も大きな被害を受けている。その被害総額は、全国で5億とも10億とも言われているらしい。更には、人獣共通の感染症を含んだ病原体の媒介も問題視されている。アライグマ糞線虫、アライグマ蛔虫を始め、ジステンパー、狂犬病、レプトスピラなどなど。

まあ病原体の媒介については、多かれ少なかれどんな野生動物にもついて回るリスクであるから、この点については現時点であまり神経質に考え過ぎる必要はないのかもしれないが、彼らのフンなどの排泄物や死骸を無闇に素手で触ろうとしない方が得策だ。フツーは触ろうとか考えないだろうけど。

そういったニッポンにおける甚大な影響に気がついた人間たちは2005年に外来生物法を制定、同時にアライグマを『特定外来生物』に指定した。それによってアライグマの輸入や飼育などは禁止され、根絶に向けて動き出したのであるが、もはや時既に“相当”遅しといったところか。

全国において、主に箱ワナによる捕獲が盛んに行なわれており、2008年には14,000頭もの個体が駆除されたと聞くが、依然として全くその数が減少している印象はない。むしろ増加傾向にある。

IMGP2020c-800

アライグマ捕獲用の箱ワナと、中には捕えられたアライグマ

例えば私は、もう何年も東京都奥多摩町で動物調査を行なっているのだが、2011年12月に奥多摩町内としては初となる公式なアライグマ個体の棲息を確認した。

その後も奥多摩町での調査を続けているが、年々その目撃頻度が高まってきており、最近ではつがいや家族単位で行動する彼らの姿を、私たちの仕掛けている無人センサーカメラが捉える機会が増加している。順風満帆にその棲息数を増やしておるのであろうなあ。これはもう、恐らく全国的に数十万頭単位にまでその数を増やしてしまっている可能性も否定できない。

今でこそまだまだ「アライグマなんて見たことなーい」という方も多いかもしれないが、あと数年~10数年もすれば、町なかでもノラネコと同じくらい……、またはそれ以上当たり前に見られる動物になってしまうのかもしれない。

その時、稀少な在来種の動物たちが何種類、ヒトの手によって放たれた彼らアライグマによって絶滅させられてしまっているのであろうか。

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA

里中遊歩 facebook 
『里中遊歩イベント情報と野生動物フィールド情報』メールマガジン登録はこちらから

ライター : 里中遊歩

6

東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。音楽ディレクター、広告プランナーなどを経て、現在では野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。「日本に棲息する外来種生物」や「東京都内に棲息する動物たち」を中心に調査を行なう。主な著書として、「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」(全国農村教育協会)、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」(実業之日本社)など。

【関連記事】
【外来種天国-日本①】外来動物の問題と人間たちの大罪 ■【外来種天国-日本②】ワカケホンセイインコ ■【外来種天国-日本③】~アライグマの可愛らしさに隠された脅威 ■イケメンゴリラたち ■写真集 『シャバーニ!』発売! ■クマに出会った際の逃げ方・対処法 ■危険動物ヤマカガシとの上手な付き合い方 ■ヤマビルの生態と撃退法「ハッカ油」スプレー ■スズメバチに刺されない為の対策&対処法 ■イノシシの知られざる真実と、驚くべき能力 ■ハエをぴしゃりと叩くのが困難な理由とは

ゴリラクリニック対談 堀江貴文×柴田英嗣(アンタッチャブル)篇
【女性にモテない?】胸毛や背毛の悩みは脱毛で解決できます

bnr_skin_thin

男性美容外科ゴリラクリニックTOPへ行くモテ男記事ゴリクリハックのトップへ行く

この記事が気に入ったら いいね!しよう

ゴリラクリニックdigの最新記事をお届けします

注目記事

新着記事

堀江x柴田 ゴリラクリニックtwitter ゴリラクリニックTVCM ゴリゴリ日記 ゴリラクリニックTVCM

週間アクセスランキングTOP10

【閲覧注意】富士の樹海は想像以上に美しく、発見した死体は想像以上に……。GPS持参で青木ヶ原樹海を探索した話

【信用経済時代】大切なのはお金よりも信用! キングコング西野に学ぶ「えんとつ町のプペル」を32万部売った方法

【激レア】マニアック過ぎィ!!日本屈指の非売品ゲームソフトコレクター「じろのすけ」氏が厳選する非売品ソフトベスト3とは

【ハプバー事件簿】人妻に連れられてハプニングバーに行ったら、期待を裏切らず無事『ハプニング』に遭遇した話

【原価率】回転寿司スシローのネタ原価率を某寿司職人から”外部”リーク! 一部上場記念「スシローうまさ上々祭」のコスパに迫る

【男料理保存版!】神田・東京カオマンガイの門外不出レシピ公開! カオマンガイのプロが語る「究極のカオマンガイ」の作り方 前編

【1話無料】漫画『やれたかも委員会』作者の吉田貴司さんに聞く、やれた「かも」に潜む男たちのリアルな願い(前編)

【殺し屋のマ―ケティング】もしもあなたが「殺し屋」だったら? 売りにくい商材・サービスを売るために大事な7つのこと

【都市伝説】ホルマリンプールってマジで実在するの?「死体洗いのアルバイト」の 妙にリアルな体験談を父親から聞いてしまった話

【お肉博士1級】お肉検定に合格した僕が驚いた、食肉に関する衝撃的な事実6つ