【外来種天国-日本②】こんな鳥、見たことない? 大都会「東京」の空を舞う南国の動物~ワカケホンセイインコ(オウムの仲間)

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記事内の写真 / 文:里中遊歩 
東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。主な著書に「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」など。

 

トーキョーと言えば大都会。
よもやそんな四角い空とコンクリートジャングルに囲まれた場所で、緑色の映える大きなオウムの仲間が群れをなして飛び交っているなど、誰が信じられようか。

しかしこれが都市伝説でもなんでもない現実……。

今回は、そんな大都会トーキョーの空を舞う、南国のオウムたちについてお話ししていこう。

とその前に、本シリーズの第一回目となる以下の記事を先に読んで頂くことをオススメしたい。「そもそも外来種とはどんなもので、在来の動物たちにどんな影響を及ぼす危険性があるのか?」といった部分の基本的な話を記している。それを理解した上で、本編を読んで頂けると幸いだ。

【前回の記事】
【外来種天国-日本①】外来種の何がイケナイ!? 野生動物のプロが教える、外来動物の問題と人間たちの大罪

色鮮やかな外来種、一体ヤツらはナニモノなのだ?

彼らの名前は『ワカケホンセイインコ』。

体長は約40cm程度、全身が鮮やかなライトグリーンで覆われており、飛翔する時に際立つその長い尾羽が美しい。また真っ赤なくちばしも特徴的で、体色の緑色とのコントラストが妙に映え、優雅さと威圧感とを醸し出している。雄の首回りには赤と黒の筋があり、その姿から『ツキノワインコ』などとも呼ばれている。

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オウム目インコ科ホンセイインコ属に分類され、元々はインドやスリランカなどに野生分布するオウムの仲間である。春から夏にかけてが繁殖期で、ケヤキなどの大きな木の上の方にある樹洞を使って子育てをする。その際、一度に3~4個の卵を産む。繁殖期以外には群れで行動することが多く、日中は数羽から十数羽の小群で行動し、夕方になると特定の樹木に数十羽から数百羽が集結(ねぐら集団と呼ぶ)して眠る。

その見た目の美しさや「ワカケダンス」などと呼ばれるコミカルな行動をとったりすること、また多くの言葉を覚えることなどからペットとして人気を博した。

しかし非常に頭が良くて神経質なところもあり、また思った以上に武闘派だったりするものだから、飼い主の隙をついて逃げ出したり、または飼いきれなくなった心ない飼い主によって放たれたりして、野生化が進行したと考えられている。

いわゆる「篭脱けの鳥」と呼ばれるものたちの代表格なのである。

 

実際どのくらいの数がいて、どこで見られるのだ?

トーキョーに住む方々の中で、どのくらいの人がこのワカケホンセイインコを見たことがあるであろうか?「いやあ、見たことないなあ」という方も少なくないであろう。しかし実は、アナタの意外と近いところに棲息しているのだ。

実際に、私がトーキョーの町なかを歩いていて彼らワカケホンセイインコと遭遇する機会は多い。でも周囲にいる多くの友人知人は、その存在に気づいていない場合がほとんどだ。

「ほれ、あそこにいるのがワカケホンセイインコだよ」と教えて初めて、「おおっ!」となる。

と言うのも、ワカケホンセイインコは背の高い木の上の方にいることが多く、また飛ぶ時も結構高度の高い空を飛ぶ。だから最初から余程「鳥を観察するのだ」という信念を持って町歩きをしていない限りなかなか見つけられにくかったのだ。

と、「見つけられにくかった」とわざわざ過去形にしたのにはワケがある。どうもここ数年の彼らの行動を観察する限り、以前とは違って随分と低い場所まで下りてきて採餌したりする場面に出くわすことが多い気がするのだ。だから恐らく、今後はボーっと歩いている一般の人の目にも飛び込んでくる機会が増えているのかもしれない。

これはきっと彼らが、「ニッポンでは、下の方まで下りていっても特に天敵もいないし危険は少ない」と気づいたことに因るのであろう。そりゃそうだ、あれだけ徒党を組んで自信満々に行動されるとネコやカラスもなかなか太刀打ちできないだろうしなあ。

そんなこんなでこのワカケホンセイインコ、今となってはトーキョーの端から端まで、23区内から多摩地区にかけて、ほとんど全域にて遭遇することができる外来種の野鳥となってしまったのである。

初めて彼らが確認されたのは、ぐっと時を遡った約50年前の1960年代、東京都目黒区にある東京工業大学の構内。数羽のワカケホンセイインコの棲息、及び営巣・繁殖が確認されたとのこと。

その後、少しずつその数を増やしていき、また棲息域も拡大を続け、今ではトーキョー全域はもとより、埼玉県や神奈川県の一部でも目撃されるようになってしまった。

そもそも彼らは、一日に20kmくらいの距離だったら楽に行き来しているらしいことが確認されている。だからもう、トーキョー近郊であればどこでも遭遇して不思議はないということなのだ。

食性は植物食の大食漢で、穀物や種子、果実、花などを、手当たり次第に貪り喰う。

私自身、春先、優雅に「花見などをしようではないか」と桜の木の下に陣取り、「やっぱりニッポンの春は美しいものであるなあ」などと感慨に耽っていたら、いきなり彼らが群れをなして出現し、私たちニッポン人の心とも言える桜の花をモシャモシャと喰い漁って去っていくなんて光景に出くわしてしまったことも、一度や二度のことではない。

 

桜の花びらをモシャモシャと喰い散らかすワカケホンセイインコ

(桜の花びらをモシャモシャと喰い散らかすワカケホンセイインコ)

更には、私の自宅ベランダには冬期限定で、可愛らしい野鳥たちの観察を目的とした『野鳥カフェ』なるものが存在する。

いや勝手に私がベランダに種子だの果物だのを置いて、シジュウカラやメジロといった在来種の野鳥たちを呼び込んでいるだけなのであるが、日に一度はワカケホンセイインコの群れが現れるのだ。そしてものの30分もしないうちに、ありとあらゆる食糧が喰い尽くされ、後から来た小鳥たちが途方に暮れることとなるのである。なんてこった……。

(里中家の野鳥カフェに群がるワカケ軍団)

(里中家の野鳥カフェに群がるワカケ軍団)

そんなワカケホンセイインコであるが、現時点での正確な棲息数は判っていない。だが恐らく、既に数千~数万羽単位で棲息していると考えて間違いないであろう。

繁殖力が強いことは勿論、あまり不慮の事故など(天敵に捕食されるなど)による落命もないし、なんと言っても寿命がメチャクチャ長い。これまた正確には判らないのだが、飼育下で30年以上は生きると言われている。

となると飼育下という環境のストレスを感じないで生きられたら、下手すりゃ40~50年くらい生きるのかもしれない。

つうことは、ほとんど死ぬ個体がいない上に新しい命がゴソゴソと誕生するワケで、毎年その数を倍近くに増やしながら生活しているという可能性も否定できないではないか。性質の悪い闇金などよりも更に酷い雪だるま式レート、過払い金相談しなくっちゃレベルだ。

トーキョーの四角い空が、彼らのライトグリーンの羽に一面覆われてしまう日も遠くはないのかもしれない。

 

彼らの存在のナニが問題!?

ワカケホンセイインコは、樹洞や人工建造物の穴などに営巣する特徴を持つ。だから、在来の樹洞性鳥類の生態系に今後大きな影響を及ぼす可能性が懸念されているのである。

未だその生態には未知の部分も多いのだが、これまでにもムクドリやアオゲラなどとの営巣地争いが確認されていたりもするし、今後その数が増加すればするだけ、そういった在来種との競合が問題となっていくのであろう。また電柱に営巣する機会が増加することで、漏電事故なども今後多発してしまう可能性も否定できない。

更には、そもそも原産国のスリランカ辺りでは、彼らは農作物を荒らす害鳥として嫌われているのだ。この先、日本国内でも農業被害などに繋がる可能性も否定できない。あの大食漢が大きな群れで飛来しようものなら、小さな畑などではたちまち壊滅状態に追い込まれてしまうことだってあり得るのである。

まあこればっかりは、人間の自業自得的なところがあるのだけれども……。

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ひとつ間違ってはいけないのは、【外来動物天国ニッポン①】でも記した通り、彼らワカケホンセイインコは全くワルモノではないということ。

自ら望んでニッポンにやって来たワケではなく、人間によって連れて来られて人間によって野に放たれた、言わば人間の被害者であることを、私たち人間が忘れてはならない。

その上で今後の対策を考えていくことが、私たち人間の責任なのである。

 

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ライター : 里中遊歩

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東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。音楽ディレクター、広告プランナーなどを経て、現在では野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。「日本に棲息する外来種生物」や「東京都内に棲息する動物たち」を中心に調査を行なう。主な著書として、「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」(全国農村教育協会)、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」(実業之日本社)など。

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