【危険生物】野生化した豚が猪に変化!? プロが教える暴走イノシシの知られざる真実と、驚くべき能力とは

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記事内の写真 / 文:里中遊歩 
東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。主な著書に「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」など。

 

意外に思われる人も少なくないかもしれないが、本州の陸地に棲む哺乳類の中で、私が最強だと考えているのはニホンイノシシ。今回はその理由と共に、ニホンイノシシの知られざる生態や行動、その能力について記していきたい。

本州最恐の陸棲哺乳類はニホンイノシシ!?

『猪突猛進』という言葉がある。

本来は、「周囲の状況などを踏まえずに、何か目的に向かって一直線にもの凄い勢いで突き進む」といったような意味であるが、まあ「周囲のことを見ることも考えることもなく、ただひたすら融通も利かずに真っ直ぐ、駆け引きもできずに突き進む不器用な様」といったネガティヴな表現として比喩されることが多いであろう。

その言葉に因るものなのか、「どうやらイノシシってヤツは、真っ直ぐ向かってきても直前で『ひょい』っと横に避けてしまえば、そのままドドドッと通り過ぎていく」といった噂を何度か耳にしたことがある。

「イノシシを狩る時は、怒らせてガケの先端まで自分を追わせたところで横に避ければ、勝手にガケから落ちて死んでくれるので、弓矢も鉄砲も要らないんだぜっ」なんてことを、まるで自分がやったことあるかのようにドヤ顔で教えてくれる人もいたものだ。

それね、ウソ。真っ赤なウソ。

甘いよ。マックスコーヒーにスプーン3杯分の練乳を追加して飲むくらいに甘い。マンガやドラマじゃないんだから。

イノシシの何を見て『猪突猛進』なんて言葉が産まれたのかは知らないが、ニホンイノシシってば、実は滅茶滅茶フットワークが軽いのだ。人間ごときがちょっと横に避けたくらいじゃ、その巧みなステップワークで急停止~方向転換~急発進を一瞬でこなして一発ノックアウト必至なのである。

しかも時速40km以上の速さで走ることができ、また首と顎の力が非常に強く、一説には70kg以上あるような大きな岩でも動かすことができるし、咬まれたら部位によっては骨が粉砕してしまうこともあると聞く。

また彼らの牙は、雄で15cm程度とビックリする程には長くないが、その先端が鋭く尖っていて立派な凶器となる。下から突き上げることで、丁度ヒトの太腿辺りにヒットしやすい。だから、大腿動脈損傷などで大きな痛手を負ってしまうことだって少なくないのだ。

更に彼らの体長は大きなものだと170cm前後、200kg近い体重のものもいる。「ニホンツキノワグマが本州最大の大きさ」と思っている方も多いようだが、なんのなんの。実はニホンイノシシの方が大きい場合がほとんどなのである。

以下にある写真を見比べて頂ければ判りやすいかもしれない。

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(ニホンツキノワグマとニホンイノシシの頭骨比較)

左がニホンツキノワグマの頭骨、そして右がニホンイノシシの頭骨だ。頭の大きさだけでも、このようにニホンツキノワグマの倍くらいの大きさがあるのだ。

こんなのに華麗なステップワークを絡めながら時速40km以上のスピードで向かってこられて、その牙と鼻先で突き上げられてごらんなさいな。スローモーションで宙を舞いながら、これまでの人生の楽しかった想い出などが頭の中を走馬灯のように駆け巡るに決まっているではないか。

そんなこんなで少なくとも私にとって、ニッポン国内において北海道に棲息するエゾヒグマの次に、つまりは本州においては最も怖い陸棲哺乳類がニホンイノシシとなるのである。

無敵です、無敵。

なんてことを言いつつ、実際に山の中で彼らと出逢えたりすると、やっぱり「ひゃっほー」とか心の中で歓喜しながら写真撮ったりしちゃうのだけど……。

 

ニホンイノシシはその勢力を拡大している!?

ニホンイノシシは、本州・四国・九州、及び小豆島や淡路島などの一部島嶼部に分布している。かつては積雪の多い地域には棲息していないと考えられていたが、昨今では棲息数の増加に伴なってか北上傾向にあるようで、雪深い長野県北部や福井県山間部などでも見られるようになっている。

山奥のみに棲息しているイメージがあるようだが、意外と人里に近い里山周辺でも生活していることが多く、東京都内でも西部のあきる野市の里山などに行くと、結構簡単に彼らの足痕などの痕跡を見つけることが可能だ。

(ニホンイノシシがその鼻先で地面をほじくり返したラッセル痕)

(ニホンイノシシがその鼻先で地面をほじくり返したラッセル痕)

図鑑などを見ると「夜行性の動物」と記されている場合も多いが、それはヒトの多い地域での話。滅多にヒトが入ることのない山奥などに入ると、フツーに昼間っから出歩いている彼らと出逢えることも少なくない。

でも大丈夫。
いくら怖いとは言え、基本的に遭遇していきなり襲ってくる程に彼らも短気でもバカでもない。イノシシって意外と頭が良い動物なので、無用のリスクは避けて通ろうとするものなのだ。

一度パニックに陥って暴走モードに入ってしまうともう手がつけられないが、普段の状態の彼らならば、コチラが気づく前に「あらやだ。変なのが来た」とばかりにさっさと逃げ出してくれるので、まず襲われたりすることはない。私も山の中で何度も彼らと出逢っているが、逃げられるばっかりで向かって来られたことは一度もない。

ちなみに千葉県では、1970年代に一度、ニホンイノシシは絶滅したとされている。
しかし近年、県内の農作物のイノシシ被害が大きな問題となりつつあるようだ。絶滅した筈なのに、また増えた? それは何故?

実はコレ、あまり大きな声では言えないが、ヒトの仕業なのである。

ニホンイノシシが絶滅して撃つ対象がなくなってツマラナイと考えた一部の心ない猟師が、意図的に放ったことに因ると考えられているのだ。しかも放ったのは、ブタとかイノブタ。
イノシシを家畜化したものがブタであることは、そこそこ知られているであろう。中国では、ブタのことを『猪』と書き、イノシシのことを『野猪』と書く。

でもね。
ブタを野に放った場合、数世代後にはイノシシに戻るというのは、意外と知られていない事実だったりするのである。

(このブタも野に放たれると、いずれ子孫がイノシシへと回帰する)

(このブタも野に放たれると、いずれ子孫がイノシシへと回帰する)

だから現在、千葉県に棲息しているイノシシは、1980年頃に野に放たれたブタやイノブタの末裔である可能性が高いのだ。
私も時々千葉県へ動物調査に赴くことがあるのだが、そこで見るイノシシは、他の地域のニホンイノシシと比較して、若干体色が明るく、また牙も小さなものが多い印象だ。コレはつまり、今まさにブタやイノブタがイノシシへと先祖返りする過程にあるからなのではないか、と推測できるのである。

 

何故ニホンイノシシは暴走するのか!?

ニホンイノシシがパニックに陥って町なかを暴走している映像などが、時折テレビなどで流されることがある。

何故彼らは暴走をするのか?
これには幾つかの理由が考えられる。

例えば、「なんか食べ物ないか探しながら歩いていて気がついたら、なんだか妙に開けていてヒトが沢山いてデッカイ変なモノ(車など)がもの凄い音とスピードで横を通り過ぎていく場所に出ちゃった……。ナニコレ怖い! きゃああー」とパニックになって暴走、とか。

しかしそれだったら、最初は普通に町歩きをしていて、どこかのタイミングでいきなり何かに驚いてパニックになるものだ。でも実際には、山から下りてきた時既に暴走モードに突入している場合も少なくない。
それは何故か?

あのー、私は決して猟師さんたちを忌み嫌ったりしているワケではない。むしろそれで生計を立てている『またぎ』の皆さんたちのことなどは、大変尊敬していて一目も二目も置かせてもらっている。いやあ、あの方々は、私なんかよりもよっぽど動物たちの生態や行動に詳しいし、決して無駄な殺生は行なわない。

でもね。
やっぱりほんの一部だとは思いたいけど中にはいるのですよ、「撃ちたい・狩りたい」だけの猟師が。しかもそういう連中に限って、動物の生態や行動知らないわモラルに欠けているわ下手くそだわでしょーもない。禁猟区域などでも平気で散弾銃ぶっ放したりしやがるのだ。

私がメインの探索・調査地として使っている山は国立公園内の禁猟区なのにも拘らず、よく散弾銃の薬きょうが落ちていたりするし、山の中に仕掛けっ放しにしている10数台のトレイルカメラ(何かが目の前を通過すると勝手に画像・映像の撮影をしてくれる頼れる相棒)にも、イヌ連れて鉄砲担いだマヌケ面の猟師たちがちょくちょく撮影されているものだ。

ホント、いつ誤射されてしまうか、結構ヒヤヒヤものである。
そもそも私たちはヒト用の山道などはほとんど歩かず、ケモノ道を辿っていたりすることが多いので、尚更怖い。イノシシやクマにやられるならばともかく、万が一そんなんで命落とす破目になった日にゃあ、末代まで呪ってやるからな、その猟師。つうか末代なんて残させない、滅ぼす。

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んで、山から下りてきた時既に暴走モードに突入しているニホンイノシシの話だった。

コレが恐らくは、その下手くそな『撃ちたい猟師』たちの仕業である可能性が結構高いのだ。フツーの猟師さんたちは、獲物を見つけると帯同している猟犬を上手に操りながら、山の上の方へとその獲物を追い詰めていき、ここぞってところで仕留めるものだ。

しかし一部の『撃ちたい猟師』たちは下手くそだから、うっかり下へと誘導してしまい、しかも仕留め損なったりする。そしたらもうアナタ、誰だって異常な興奮状態になって町なかを暴走するに決まっているではないか。

暴走イノシシがテレビのニュースなどに出たりすると、大抵の場合は「イノシシったら危ない! けしからん!」といった論調になるが、彼らをそうさせた原因が一体何なのか、といったところをもう少し掘り下げてみてもらいたいものだ。

そうしたら「そりゃ暴走もするわな」といった話になるし、「だったらその原因をつくっている私たち人間の立ち振る舞いを、どう変えていけば良いか?」といった建設的な話にも繋がり、結果、ニホンイノシシにとってもヒトにとっても無意味な傷を減らすことができる筈なのである。

 

暴走イノシシと出遭ってしまった時には!?

で、実際に暴走イノシシと遭遇してしまったら、どうすれば良いであろうか?

いくら『撃ちたい猟師』に向けてありったけの恨み言を吐き捨てたとしても、対峙している暴走イノシシには全く理解・同調してもらえないだろうし、何の解決策にも繋がらない。もはや自分の身は自分で護らねばならない。

と言いつつ、相手は『無敵』だ。
リスクは伴なうが、それでも何もせずになすがままでいるよりは良い。

まず最も気をつけるべきは、「決して背中を見せて走って逃げようとしない」こと。一瞬で追いつかれ、すこーんと空中に放り出されてしまうであろう。

その上で、考え得る対策は2つ。

ひとつ目は、『高所への退避作戦』。無敵のニホンイノシシではあるものの、一応弱点もある。それは「ジャンプ力がイマイチ」ということ。
とは言え、1mくらいの高さまでならばジャンプできてしまう個体もいるので、最低でも1.5mくらいの高さの場所を見つけて避難したい。

あのー、その際、階段上って「1.5m到達!」とかダメですからね。フツーに階段上れます、ニホンイノシシ。

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一番良いのは『木』。スルスルっと1.5m以上木に登って避難すれば、まず届かない。しかし町なかだと、なかなか木登りに適した木など見つけにくいかもしれないし、そもそも木登り自体が結構ハードル高い。
となると、塀の上、またはその辺に駐車しているトラックの荷台とかが現実的な線か……。公園のジャングルジムやすべり台の上とかでも良いな。

ともかく、自身の身体能力と照らし合わせ、「ここならイケる!」って場所を選んでよじ登ることが大切となる。だから普段から暴走イノシシに備えた最低限の体力づくりを推奨したい。

そしてふたつ目の対策法は、これまた難易度の高い『いきなり視界を遮断作戦』

向かってきた暴走イノシシの鼻先に向けて、「あともうちょっとで突っ込まれる!」というタイミングでワンタッチ傘などをバッと開く作戦だ。傘がいきなり開いて視界が遮られると、ニホンイノシシはビックリして、その機敏なステップワークを駆使し、踵を返して逃げていくとのこと。

いやコレ、実際に私は見たこともやったこともないので、効果の程は不明である。
なーんか、既にパニックになっているワケだし、そのまま突っ込まれて終わりってことになりそうで怖い。しかもコチラからも相手の様子が傘に隠れて今ひとつ見えにくかったりするところが、余計に恐怖心を煽るではないか。

そして仮にそれが本当に効果的だったとしても、そう都合良く傘なんか持っているとも思えないし、運良く持っていたとしても、それがコンビニの透明ビニール傘とかだったら意味がない。視界全然遮れないがな。

だからこの作戦を実行したい人は、外出時は常に、なるべく大きな不透明のワンタッチ傘を持参することをオススメしたい。

嗚呼、どちらにせよ非常に難易度が高い……。
でも仕方がない、なにしろ相手は『無敵』なのだから……。

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ライター : 里中遊歩

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東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。音楽ディレクター、広告プランナーなどを経て、現在では野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。「日本に棲息する外来種生物」や「東京都内に棲息する動物たち」を中心に調査を行なう。主な著書として、「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」(全国農村教育協会)、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」(実業之日本社)など。

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