【世界一辛い】話題の“DEATH UDON(デスうどん)”へのライセンス! 武蔵野うどん藤原の「ジョロキア地獄」を食べてみた結果

文:星野藍
グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。
世界一辛いうどんが埼玉にある!?
世界一辛いうどんが埼玉にある。そんな話を耳にし、私は興奮を覚えた。そう、私は辛い食べ物が大好きなのだ。
世界一辛い辛いうどん、その名も“DEATH UDON(デスうどん)”。
しかしこのうどん、余りの辛さで食べて気絶した人がいた為、食べる為には“ライセンス”が必要なのだ。ライセンスを取得するには“ジョロキア地獄”という世界一辛い唐辛子ブートジョロキアを使用した激辛うどんを完飲完食しなければならないという……。
これは、やるしかない。心に決めた私は同行者を引き連れ埼玉県に進軍した。
武蔵野うどんの名店・藤原
世界一辛いうどんを出す店の名は「武蔵野うどん藤原」。
武蔵野うどんとは東京都・多摩地域と埼玉県に伝わるうどんの事を指す。元々は郷土料理で、一般的なうどんよりも太く色はやや茶色がかりコシが強い。麺はざるに盛る。つけ麺の汁はかつお出汁を主とした強い味で、甘みがある。
ローカルなうどんなので最近まで私も知らなかったが、埼玉県はうどんの生産量が全国2位という実はなかなかなうどん県である。香川を抜くうどん県にしようという動きをする団体もいるようだが、香川を抜く事など到底不可能だろう……そう容易い事ではない。
JR埼京線、北与野駅より徒歩8分。閑静な住宅街の道路沿いに店はある。
券売機には「自己責任で食べてください」 と注意書き。妙な緊張感を胸に食券を購入する。ジョロキア地獄、そして……、完飲完食に向け私には秘策があった。
いざ、ジョロキア地獄に挑む!
着席してからそう時間もかからずジョロキア地獄がやってきた!
そして同時に注文した温泉たまご、かぼちゃの天ぷら、さつまいもの天ぷら。そう、私には秘策があった。丸腰のままジョロキア地獄に挑むのは危険すぎる。なので下準備そして対策が必要だろう、と。
まず、ジョロキア地獄を食す前にヨーグルトを飲む。胃に膜を張るのだ。本当はサーロ(豚の脂身の塩漬け)にウォッカで強靭な膜&気合を入れたかったのだがウクライナのトラディッショナルフードがここ日本で手に入るわけもなく……。
そしてジョロキア地獄を食す際は、唐辛子の辛さをまろやかにする為温泉たまごを入れる。たぶん、激辛成分がまろやかになるだろう。
しかもひとつではない、ふたつだ。
何故ならジョロキア地獄、完食だけではなく完飲、その激辛つけ汁を飲み干さねばならないのだ。どう考えても正気の沙汰じゃない。なので飲み干す際もうひとつの温泉をつけ汁に入れ飲みやすくするという戦法だ。
そして天ぷら。
こんなに大きいのにかぼちゃが80円でさつまいもが60円! かぼちゃとさつまいもを選んだのには理由がある。
たとえばパフェにウエハースが添えられているのは、アイスクリームの冷たさをウエハースを齧る事で和らげるためだ。それと似たようなもので、辛さを和らげるなら甘みのある野菜の天ぷらが有効なのではないだろうか、と考えたのだ!唐辛子に含まれるカプサイシンは脂に溶ける性質を持ってもいるらしいので、油で揚げた天ぷらはベストなのかもしれない。
全ては仮定だが勢いでなんとかなる! はずだった……。
思った以上に辛い!
さて、まずはジョロキア地獄のつけ汁に箸を入れ舐めてみる。
……ビリっとする。ハバネロのような香りもする。これだけで唾がじゅっと出て自らの身体が「やばいぞ!?」と反応しているような気がした。
そしてうどんをつけ汁に浸す。
これを一気に啜るのはやばそうなので刺激にならないようにスルスルとゆっくり口の中に入れていった。
辛い。今まで食べた物の中で一番辛い。なんだこれは。
「やばくない?」
「うん、やばいね……」
同行者と顔を合わせやばい物を食べてしまっている事を再確認する。でも、後には引けない。
凄まじく辛いが同時に美味しくもある。肉の旨み、ネギの甘みが優しい。うどんよりこれらつけ汁の具材を食べる方が楽だった。
途中からひとつ目の温泉たまごを入れる。
……辛さは全く変わらなかった、全然辛いじゃないか! うどんを食べ進めていくうちに、なんだか胃がキュッと収縮する感覚を覚えてくる。
天ぷらで箸休めだ。しかしここで思わぬ誤算があった。
「天ぷら、熱っつ!!!」
そう、揚げたての天ぷらはめちゃくちゃ熱かったのだ。
激辛でビリビリ痺れる口内に熱源が飛び込んでくる、火に油というか火に炎と言った感じだ。完全に失敗した。本来なら嬉しいはずの揚げたて天ぷらがこんな感じで仇となるなんて! しかし、味は美味しい。素晴らしい天ぷらだ。
つけ汁を飲むのは意外とラク。しかし……
なんやかんやとうどんを同行者も私も完食し、ラストつけ汁完飲の局面。ここで、ふたつ目の温泉たまごを入れる事で辛さを緩和する予定だったが温泉たまごではジョロキアの猛攻は止められない。
ただただに辛い汁のカサが増しただけで飲まなくてはならない量が増えるという残酷な結果を生んだ。もはや、事前に胃のバリアとして飲んでいたヨーグルトは無意味だった。胃がヒリつく。しかし、負けるわけにはいかない。意を決し、つけ汁を一口飲んでみる。
「……あ、意外と平気かも」
うどんを啜る時よりラクだった。感覚が麻痺していたのかもしれない。口の中に唐辛子のザラつきを感じつつそのままゴクゴクと飲んでいく。
「え、マジで……」
ドン引きする同行者を横目に完飲。
「大丈夫大丈夫、一気に行けば意外とイケるよ!」
そう、その時まではそう思っていた。
デスうどんのライセンスGET!
同行者も無事完飲し、デスうどんのライセンスをGETした!(丸ごとの唐辛子は残して良い)
正確には、この時渡されるのはデスうどんのライセンス引換券。一週間後、正式にライセンスが出来上がるので、出来上がったら引き換え、という事だ。
隣でジョロキア地獄にチャレンジしていた若い男性に一気に飲めば大丈夫と無責任なアドバイスをして、私たちは店を出た。しかし……。
「やばい……」
なんだか、体調が悪い。悪いどころじゃない、一気に“来た”。ギュッと意を内側からひん捕まれるような痛みが背中まで突き抜け、まともに立っていられない。動悸が激しくなりバクバクと脈打つ心臓を喉の奥から感じる。
「やばい……やばい……」
思考が著しく低下している、やばいしか言葉が出てこない。シクシクジクジク胃の痛みは激しくなっていく。
「とりあえず駅に向かおう。あと胃薬買おう」
胃の内容物というよりは、ジョロキア地獄完飲完食後飲んだ大量の水と刺激物に驚いて大量分泌されているであろう胃液がこみ上げてくるといった感じだ。普段ポーカーフェイスで何を考えているのかいまいち分からない同行者の顔に、見た事のない余裕のなさと苦悶が表れている。(これ、もしかしたら今日このまま死ぬかもしれない)本気でそう思った。
意識朦朧
口数少なく、時折言葉が出れば「やばい……」しか言わない。
吐き気が込み上げ意識が朦朧とするが、ここで吐くとジョロキアと胃酸の刺激で、食道が爛れとんでもない事になるらしいとネットで調べた同行者に諌められなんとか堪えた。
息絶え絶えになりながら駅に到着し、互いに暫くトイレの個室にこもり落ち着かせる。(やばい……やばい……やばい……やばい……やばい……)エンドレスやばい。
数分後なんとかトイレから這い出て薬局で胃薬を購入する。液体の即効性のありそうな薬をチョイス。植物っぽい味に癒される……。そして牛乳を飲んだ。
それでも暫く身動きが取れず、駅前のベンチで夏日にジリジリ炙られながらぐったりと憔悴しきっていた。
「これ、デスうどん食べたら本当に死ぬんじゃないの……?」
「そんな気がする……」
今回私たちは完飲完食という勝負には勝った。しかし身体は惨敗だ。息絶え絶え吐き気を堪えながらなんとか自宅に戻り、爆撃を落とされ焦土と化し生命の死に絶えた大地のようにぐったりと横たえた。
そのまま眠り続け翌日、胃の痛みはなんとか収まったが食欲は湧かず、ヨーグルトと柔らかく茹でたうどんのみを食した。(あ、余裕なさすぎて店の外観最後撮るの忘れてた)
しかし、生きている。あれだけ辛いものを食べても生きている。あれは食べ物じゃない、食べる地獄だ。もしチャレンジしようと思った人がいるなら、決して無理はしないで欲しい。
ライター :星野 藍

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。
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