【戦車が残る街】女性写真家『星野藍』が見た、旧ソ連の秘境・未承認国家「ナゴルノ・カラバフ」の廃墟と戦争の爪痕

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文:星野藍
グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。

未承認国家、というものを知っているだろうか。
国際的に国家と認められる事のない国の事だ。

国家に必要な3つの構成要素“領土・国民・主権(実効的支配)”を全て満たし独立主張があるものの政治的事情などにより国際社会から広く承認を得られていない地域が、国である事を主張する。そういった場所が世界各地にある。

日本人にとって一番と言っていい程身近な外国である台湾も、実は未承認国家である事は余り知られていない。

今回はそんな未承認国家の中でも、私が特に思い入れのあるナゴルノ・カラバフについて書き記そう。

 

ナゴルノ・カラバフとは

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ナゴルノ・カラバフ共和国(以下カラバフ)は国際的にはアゼルバイジャンの領土にある。
カラバフは古くからアゼルバイジャン人とアルメニア人による領土紛争の舞台となっており、そこでは多くの血が流されてきた。

1988年に勃発した「ナゴルノ・カラバフ戦争」の後1991年に独立宣言を発し、現在もその領土は独立状態を保っている。

アルメニアが実行支配しており、通貨はアゼルバイジャン・マナトではなくアルメニア・ドラムを使用し、公共語もアルメニア語だ。

ふとしたきっかけでこの不思議な未承認国家の存在を知った私は、湧き上がる好奇心を抑えられずカラバフへ飛んだ。

 

アルメニアからカラバフへ

 季節は正月。

この季節のアルメニアは日本と同じく祝日にあたる。そしてアルメニアのクリスマスイブは1月5日で、6日がクリスマスイブ当日となる。

年末から翌年の6日まで、殆どの店は閉まり公共交通機関の数もぐっと減る。タクシー代も跳ね上がる。街が完全に眠った状態になるとは思わず流石に参ったが考えても仕方がない。
アルメニアの首都・エレバンからマルシルートカ(乗り合いバス)に乗る。

時間は朝7時。私が最後の乗り合い客だった。おそらく珍しいのだろう、不審な東洋人に不可解な視線が刺さる。

雪に包まれた首都を離れれば離れるほど雪風の勢いが増し、山に差し掛かったところで猛吹雪となった。

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立ち往生する車。諦めて引き返す車。雪に埋もれ身動きが取れなくなった車。吹雪の彼方に消えた除雪車。

気がつけば2時間が過ぎていた。そして漸くマルシルートカが動き出した。先に行っていたはずの除雪車は、無残にも強風でなぎ倒され雪が降り積もっていた。狭く険しい山道を延々と進んで行く。

8人乗りのバス……というかバンに無理矢理16人が詰まり、いつ転倒してもおかしくない状況の中幾つもの山を越え、谷を越え、山を越え、谷を越えた。

カラバフの首都「ステパナケルト」への到着時間は5時間ほど遅れ、あたりは真っ暗な闇に包まれてしまった。

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たまたま共に乗り合わせていた青年が空いているホテルを探すのを手伝ってくれたどころか翌日も散策を共にしてくれた。彼は最後まで身分を明かさなかったが、明らかに“戦う側の男”だった。

 

カラバフ名物

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カラバフもアルメニアの祝日に準じている。アルメニアの人々は正月の殆どを家族や親戚と家の中で過ごす。町を出歩く人は殆どいなかった。

街並みは東欧のそれに近い。閑散とした市場でカラバフ名物だという“ジンギェロハツ”(…と言っていたと思う。向こうの発音は難しい)を青年にご馳走になった。

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たくさんの香草とたっぷりのオリーブオイルが練り込んである平焼きのパンだ。焼きたてほかほかの美味しさと言ったら!氷点下の中歩き回った身体に優しく染みる。ひとつでお腹いっぱいになる程大きいパンだ。

外務省で滞在ビザを発行して貰い、私たちは戦争の爪痕残る小さな村へと向かった。

 

戦争の爪痕

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ナゴルノ・カラバフ戦争の激戦地となったこの村は、嘗ては多くのアゼルバイジャン人が住んでいた。

戦争により故郷を失った人々は、現在アゼルバイジャン各地に点在し貧困の中現在も移民として生活している者たちが多い。彼らはアゼルバイジャンの首都バクーの工場跡にコミューンを結成していたりする。

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アゼルバイジャン人はイスラム教を信仰している。村には廃墟となったモスクが幾つか残っている。

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中に入ると、不思議と音が聞こえない。外はあんなにも風が吹き荒んでいるというのに。とても静謐な空間だ。

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不思議な模様を織り成すレンガの芸術。ぐるぐると、真ん中を見つめていると吸い込まれそうだ。

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昨日と打って変わった美しい青空。しかし山間に吹く風は相変わらず強く、粉のような雪をキラキラと舞い上げる。
廃墟と化したアパートには銃痕が残り、生々しい戦争の爪痕を残す。

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戦争で最後の砦となったこの村は、今では少しずつ復興はしているらしいがそれでもまだ完全なる復興は遠い話となるだろう。

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村の規模に見合わぬ真新しいホテルには一体どういった人が泊まるのだろうか。

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村のはずれには、アルメニア軍のT-72戦車が飾られている。
その砲身の先には、アゼルバイジャンがあるという。今も散発的に、カラバフとアゼルバイジャンの衝突が度々起きている。それがいつ、再び紛争となるのか。

本当の意味で戦争はまだ終わっていない。

 

星野藍「幽幻廃墟」

…と、宣伝です。
この度9月1日、当方2冊目の単書となる『幽幻廃墟』を上梓しました。

 

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ナゴルノ・カラバフ共和国を含む未承認国家から日本まで、今までの廃墟写真集とは毛色の違う一冊を目指してみました。幽幻なる景色を求めて旅をした記録、是非ご堪能頂ければと思います。

何卒よしなに!

そして恐れ多くも出版記念イベントを催させて頂く事になりました。余りにも急だったので本人が一番吃驚しています……。

東京ではLive Wire HIGH VOLTAGE CAFE、そして大阪でもイベントが催されるかもしれません。概要決まり次第告知します。

★東京
星野藍「幽幻廃墟」出版記念トーク

[出演] 星野藍、都築響一、関口勇(ワンダーJAPAN編集長)

[日時] 2017年9月23日(土/祝)
     開場19:00 開始19:30(約2時間を予定)

[会場] Live Wire HIGH VOLTAGE CAFE
    東京都新宿区新宿5丁目12-1 新宿氷業ビル3F
   (1F割烹「いちりん」右階段上がる)Googleマップ
・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6~8出口から徒歩5分
・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1,500円(当日券500円up)

※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します(約2時間)。参加費は3,500円です。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。

※懇親会に参加されない方は、当日受付時に別途1ドリンク代500円が必要となります。(2ドリンク購入の場合は100円引きの900円とお得です)

予約はこちらから!

 

ライター :星野 藍

星野

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。

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