【閲覧注意】富士の樹海は想像以上に美しく、発見した死体は想像以上に……。GPS持参で青木ヶ原樹海を探索した話

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樹海探索家「K氏」との出会い

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樹海。

と聞いて思い浮かべるのはなんだろうか。

自殺の名所、というものをまず思い浮かべる人が殆どかもしれない。というかそれしか思い浮かばないかもしれない。

近年観光名所として一部賑わい天然記念物や遊歩道もあるものの、樹海の大半が人が踏み入れぬ未知なる森のままだ。

 

友人を介して知り合ったとある男がいる。名を仮にKとしよう。

初対面時は会話も余りせず、挨拶程度で別れたと思う。普通におとなしい、普通の男だと思っていた。

が。

その後ひょんなきっかけで飲み会を開いた時、ナチュラルに彼は言った。

「俺、樹海探索が趣味なんだよ。」

「え、樹海?」

肉肉しい赤い牛肉をわしわし食べながら彼は話す。

「森の緑が綺麗なんよ。」

「そうなんだ、……死体とかやっぱあるの……?

「あるよー。」

「え……。」

「見る?」

「え、撮ってるの?」

Kは、キラキラした瞳で妙に嬉しそうに笑いスマホで撮った写真を見せてきた。

「……。」

 

そこには様々な時期、様々な死体があった。

完全に骨になった死体。

ズグズグに腐敗した死体。

真っ黒な死体。

死後数時間後の綺麗な死体。

動物に食い荒らされた死体。

明らかに自殺に見せかけた他殺されたような死体。

「…すごいね。」

私は数々の死体写真を見せつけられながらもユッケを、肉寿司を、刺身を、だし巻き明太を、平然とむしゃむしゃ食べ続けた。

一般的にこれらの死体写真は気持ち悪いものだろう。

しかし私は、ホラー映画マニアの父の英才教育により、2歳の頃からゾンビ映画やスプラッター映画の類を見せられ続けているのだ。グロ耐性は並大抵のものではない自信がある。食欲だって勿論落ちない。

「ねぇ、こういうのって樹海に行けば見れるの?」

「んー、必ずではないけどね。探して運が良ければ見れるよ。」

我ながら、不謹慎にも程がある。でも、好奇心を抑えられなかった。

「生で見たいって言ったら、いいかい?」

「いいよ。」

Kは実にあっさりと、でもやっぱり嬉しそうににや〜っと笑いながら承諾した。

 

いざ「青木ヶ原樹海」へ

日取りを決め、都内某所で待ち合わせる。

私と同じように『死体を見てみたい好奇心』に駆られたアングラ系女子S子を連れ、Kの車で樹海へと向かった。

都内から思いの外樹海は近い。八王子からなら1時間半で着く。

中央道で車を飛ばす。だんだん山景色となり富士山が大きく見えてくる。

一同は富岳風穴と呼ばれる天然記念物に指定された洞窟の駐車場までやってきた。

『自殺志願者』の多くは、この辺りから樹海へ入っていくらしい。

駐車場の一番端に、ふと目に止まる異様な車がある。埃をかぶりタイヤの空気は抜け、駐めてから明らかに何年か経過した様相だ。車内には様々な荷物がそのまま残されている。

「この車、もしかして……。」

「自殺目的で来たんだろうねぇ。」

……初っ端から『死の森』の洗礼をダイレクトに喰らった。

 

初めての樹海探索(GPSを携帯)

装備品をまとめ、遊歩道から樹海へと入っていく。

この時12月中旬、木々で覆われ日光を通さない樹海の中はひんやりとしていて、外界の空気よりも一段寒かった。

 

しかし意外にも、樹海は美しかった。

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この辺りの森は富士山の噴火で噴出した溶岩が麓に流れ込み、木々が生い茂り広大な森となっていったものらしい。その為冷え固まった溶岩がゴツゴツと無骨な姿を現しながら、その上に木が根を張り草が芽吹き苔が生す独特な形態を繰り広げている。

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上を見上げると、みっしりと木が枝を広げ空を覆っている。どんな晴れの日も薄暗く、じんわりと湿った空気が漂う。

ネイチャーグリーン。森林浴を楽しむ目的で樹海へ来るユーザーもいる位だ。

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暫く遊歩道を歩いて行くと、以前使用されていた遊歩道に直面する。

「ここから入っていくよ。」

Kに続き、私とS子は樹海の奥へと入っていく。

旧遊歩道とは言え、未だに頻繁に闇への探求者たちが踏み入れているらしい。じゃなければ、道がこんなに綺麗なわけがない。もっと荒れるに任せ森に還っている容貌のはずだ。

GPSで現在地を確認しながらKは言う。

「本格的に森の中に入るよ。」

ここから先は道というものがない。ひたすらに溶岩と木の根で覆われた森をトレッキングするのだ。

地面が土ではないので非常に足場が悪い。草と根と苔で覆われている為普通の地面のように見える場所でも、踏むと実は溶岩と溶岩の隙間で出来た落とし穴状態になっていたりする。

そして意外にも高低差がある。同じ100メートルを歩くにしても、平地を歩くのとは労力が違う。

自殺志願者たちの多くは、真夜中に樹海へ入り、朝方に命を絶つという。

ここまで足場の悪いところを、真っ暗な闇の中たった一人で進むのかと思うと……正気の沙汰ではない。

「樹海慣れしてるね。」

サクサク躊躇なく進んで行くKを見て私は言う。

「もう10年以上やってるからね、この趣味。」

この男、昼間は普通のごく一般的なサラリーマンをしている。しかもどちらかというとエリートの部類だ。

スーツを几帳面に纏い、これと言って何が目立つ様相もない。会社では「無趣味です。休日は寝ているだけですよ」と平然を装う。

たいそう生真面目な日本人が実に好む日本人像というものを演じ、彼は社会に擬態している。絶対に樹海の『じ』の字も匂わせる事はない。

『この趣味』とは、樹海なのか死体なのかどちらなのか……聞いてみたいが未だ怖くて聞けない自分がいる。

 

「うわ……。」

探索早々、思わず顔を歪めるものを発見した。木に吊るされた首吊りロープを目にしたのだ。

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「ああ、あれは誰かのいたずらだよ。」

全く、悪趣味な奴がいたものだ。これからの樹海探索のムードを盛り上げる。

しかし、マニアの間では『団地』と呼ばれるエリアを2時間ほど歩いたが、結局死体を見つける事はなかった。

死体が多く見つかる事から『人がまとまって多くいる場所=団地』という発想で付けられた名称らしい。

途中『誰かが滞在していた痕跡』は見つけたものの、生きている人も死んでいる人もいなかった。

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歩いていればどんな状況でも腹が減る。足場の良いところでコンビニで買ったおにぎりを食べる。

辺りを見回しても全部同じ景色に見える。

草、草、草、木、木、木、森、森、森。

そう、遊歩道からたった100メートルでも森の中に入ってしまえば、いとも簡単に迷子になれるのだ。携帯のグーグルマップでは位置が狂うので、しっかりとGPSを持って探索しなければならない。

外で食べる飯というものは、何故にこんなにも美味しいのだろう。例えそれが樹海であっても。

空気も美味しい。普段都心部で殺伐とした人混みを掻き分け戦い抜いていると、この穏やかな時間が愛おしく思える。

腹ごなしもしたところで、今度は更に西の方を行ってみようという事になった。

しかし、木の根を大きく踏み越え右足を地面に下ろした時だった。

――ぐにっ。

苔や根や岩を踏んだ時の感触とは違う、柔らかな踏み心地。足元を見ると……

「でかいうんこ踏んだー!!」

私は叫んだ。

己の拳よりも大きい、巨大な丸い糞を踏んだのだ。こんな爆弾のような形状の糞を見るのは生まれて初めてだ。もちろん人間の出すものではないだろう。

靴に付いた糞を地面に擦り付け何としてでも刮ぎ落とす。

「うわぁうんこや、えんがちょ!」暗鬱な森に似合わぬ快活な笑い声をS子は上げる。彼女もまた、Kに負けじ劣らずの変わり者だ。

「しかし何の糞なんだ……。」

樹海の中は概ねネットが繋がらないが、場所によっては繋がる。幸い、糞踏み地点では繋がったので早速調べてみた。

「これ……熊の糞かも……。」

特徴と大きさが、まさにそのままだった。

「……。」

樹海に熊がいる。それだけで恐怖だ。踏んだ時の柔らかさと手を近づけた時のぬくもり感からして、放り出してからそんなに時間は経っていないはずだ。

「そういえば前に樹海で猟銃持った猟師に出くわした事あるんだけど、熊が出たって言ってたな。」

Kよ、そういう情報は頼むから中に入る前に言ってくれ。

 

爆弾発言「実はちょっと離れたところに……」

さてそれからまた2時間ほど散策したが、結局死体を見つける事はなかった。

ほっとするような、がっかりするような。だが、近年では見つからない事の方が多いらしい。『樹海ブーム』も昔の話、黄金時代は過ぎ去ったのだ。

しかしここで、Kが恐ろしい爆弾発言を投下する。

「実はちょっと離れたところにこないだ見つけた死体があるんだけど、見る?」

「え。」

こないだ見つけた……?

どういう事……?

背筋を、冬場の寒気とは違うゾゾゾとしたものが通り抜けた。

「…うん。」

ここまで来たなら引き返す事は出来ない。

 

初めての死体

一度駐車場まで戻り、車で移動し適当なスペースに停車する。

さくさくっと森に入っていくKの後を、私たちは顔を見合わせながら入っていく。登山道らしき道から逸れ、アップダウンの多い森を暫く歩いて行くと「あれだよ。」とKが言った。

目視出来るそれは、白骨。衣服を纏い、横たえた白骨だった。

「……。」

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綺麗な状態で残っている、と言ったらおかしいかもしれないが、それは死んだその時から変わらないであろうポーズで残っていた。

ダウンジャケットにジーパンに運動靴。恐らく亡くなったのは春先か秋か冬か。服装からするに30代以降の男性に違いない。死後1年と言ったところだろうか。

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下顎の骨は頭蓋骨から外れ地面に落ち、奥歯に光る銀歯が目視出来る。何故か病院で使うような酸素マスクが落ちており、大きな丸いタンクもあった。『Balloon Time』と書いてある。ヘリウムガスだ。これを吸って中毒死したのであろうが随分と凝った死に方だ。

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旅行用のトランクも近くにあったがチャックが開けられ随分と中が荒らされていた。

「Kさんがやったの?」

「違うよ、最初からこうなっていたんだ。恐らく金品目的の探索者や、興味本位の探索者が漁ったんじゃないかな。」

「って事は、他にもここに来ている人たちがいるって事?」あなたもその一人だしね。

「だろうねぇ。」

こんな時でも、Kの口調は落ち着き払って淡々としている。冷静で抑揚の無い口調には、ある種の恐怖を煽られる。

白骨は横たわってはいるが、不自然に足を交差させていた。

「ねぇ、この人両足首テープ巻きつけてるんだけど。」

「あ、ほんとだ。逃げないように自分で巻き付けて自殺したんだろうねぇ。」

「……。」

心なしか、純粋な少年のようなキラキラとした瞳を見せた……ように見えた。

他殺を疑わないのか……?

それでもシャッターを切り続けた自分たちは、余りにも残酷で非情で、異常かもしれない。

しかし正直、白骨死体を目の前にしたところで何の感情も沸かないのだ。

ああ、人間は死んで朽ちたら、こうなるんだな。これは、人間だったものであり、ただの物体でしかないんだ。

そこから何の感傷も生まれない。

ヘリウムガス自殺(?)なのに、何故首吊り用ロープも荷物に入っていたのか、謎は多く残るままだが、日の入りも近づき夕闇の森の中にい続けるの危険なので早々に脱出した。

 

開かれた旅の扉

散策を終え、腹も減ったので私たちは山梨名物ほうとうを食す事にした。

大きな鍋に一人分、たっぷりの野菜と肉で煮込まれたほうとうを熱々を食す。ああ、なんて美味しいんだろう。より一層、死の森での出来事に現実感を抱く事が出来ない。

ほどなくしてその白骨死体は通報され、身元も判明した。驚いたのが所持物として42万円もの現金を持っていたという事実だ。トランクには見当たらなかったから、衣服の中に所持していたのだろう。となると、その紙幣は腐敗した体液や蛆にまみれて……?これ以上は考えないようにしよう。

「また誘うね。」

Kは笑う。純粋無垢な、キラキラと輝く少年の瞳を湛えて。

「うん、宜しく。」

そして私も答える。樹海への旅の扉を、すっかり開いてしまったようだ。

 

※この話はフィクションです。実際に興味本位で樹海へ深く立ち入る行為などに関して、安全を保証するものではございません。

 

ライター :星野 藍

星野

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。

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