【パラトリエンナーレ】日本の障害者は生き方の選択肢が少ない! 栗栖良依が見据える、スローな価値観と個々の生き方 (前編)

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栗栖良依さんとパラトリエンナーレ

今年5月、障害者と多様な分野のクリエイター、アーティスト、そして市民が協働して生まれる国際芸術祭「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」(以下、パラトリ)の記者発表会が横浜市の象の鼻テラスで行われた。

2014年に開催された第1回を経て、今回で第2回となる今年のパラトリについて、総合ディレクターの栗栖良依さんと実行委員長の島田京子さんが登壇。

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国内外で活躍するアーティストと福祉施設とのプロダクト開発などを展開する「SLOW LABEL」のディレクターでもある栗栖さんから、前回と今回の狙い、そして今回のパラトリが2020年の東京オリンピック・パラリンピックへの指標となることなどが語られた。

出典:SLOW LABEL公式より出典:SLOW LABEL公式より

様々な人と出会って手探りの中で行った前回とは異なり、今年のパラトリは「sense of oneness とけあうところ」をテーマに、単に障害者の作品を展示、発表をする場ではなく、障害の有無を超え、参加者同士が一体となって、ひとつの作品世界をつくりだすことを目指す。具体的には障害の有無に関わらず、市民が参加できる創作ワークショップの開催、巨大インスタレーションと野外パフォーマンスの発表、そして障害者の創作活動を支えるアクセシビリティを学ぶ人材育成などを行うとのこと。

また今年は、キックオフイベント、パフォーマンス出演者オーディション、公開制作などが9月末まで行われ、10月上旬に発表会、11月以降には象の鼻テラスをはじめ、横浜市内各所で作品の記録映像や写真の巡回展示が行われる予定となっている。

記者発表後、海外でも活躍する栗栖さんに、障害とアートを巡る国内外の状況や私たちが障害と向き合ってできること、彼女が2011年に立ち上げた「SLOW LABEL」が目指す社会などについて詳しく伺った。

栗栖良依さん プロフィール

1977年東京都生まれ。7歳より創作ダンスを始める。高校生の時にリレハンメルオリンピックの開会式に感銘を受け、卒業後は東京造形大学に進学。在学中から大手イベント会社に所属し、スポーツの国際大会や各種文化イベントで運営や舞台制作の実務を学び、長野五輪では選手村内の式典交流班として運営に携わる。2006~07年、イタリアのドムスアカデミーに留学、ビジネスデザイン修士号取得。帰国後、東京とミラノを拠点に世界各地を旅しながら、各分野の専門家や地域を繋げ、商品やイベント、市民参加型エンターテイメント作品のプロデュースを手掛ける。10年、骨肉腫を発病し右下肢機能全廃。翌年、右脚に障害を抱えながら社会復帰を果たし、国内外で活躍するアーティストと障害者を繋げた市民参加型ものづくり「スローレーベル」を設立。14年「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014」総合ディレクターを務め、日本のコ・クリエイションアワードベストケーススタディ賞受賞(インフォバーン、電通)。

出典:SLOW LABEL

 

2014年に直面した、「心のバリア」と「アクセシビリティ」とは

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――2014年を経て今年のパラトリが行われるわけですが、栗栖さんの中で、この3年間で障害とアートという分野における変化や課題というものはどのように見えていたのでしょうか。

栗栖良依さん(以下、栗栖):オリンピック・パラリンピックを開催する上で、大会時には、スポーツ競技と並行して「文化プログラム」を開催することが義務づけられています。2020年の東京大会でも文化プログラムが重要視されるわけですが、関係者がよく比較参考としてして語るのが、2012年のロンドン大会です。ロンドン大会の文化プログラムでは、障害者による質の高い芸術作品が一堂に会するフェスティバルなどが注目を集めたと聞いています。過去に、障害やパラの面白さに焦点を当てた大会はあまり聞いたことがなく、ロンドンでは、パラリンピックのチケットが完売するなど、大変な盛り上がりを見せたそうです。イギリスの公共テレビ局であるチャンネル4が、格好良いパラリンピック放送のPRキャンペーンを放送したことも記憶に新しいと思います。

すでに足に障害を持っていた時にそんな大会を見て、2014年にパラトリエンナーレを作りました。日本もイギリスと大きな差はないはず。同じような視点を持って創作をしたら高い質のものを作れるだろうと。ですが、実際には理想のものは全く作れませんでした。そもそも、スタート地点にも立てていなかったことに直面したのが2014年のパラトリでした。

 

――どのような問題に直面したのでしょうか。

栗栖:いろいろな課題がありましたが、一番はアクセシビリティの問題です。「障害のあるなしに関係無く、誰でも参加できます」とあらゆるところで呼びかけましたが、障害のある人がなかなか集まらない。そこには情報伝達、物理的、精神的なバリアがあることを感じました。

障害のある人が参加できる環境づくりの必要性を痛感しました。その経験から、この2年間は障害者が舞台に立つまでのサポートをするアクセスコーディネーターや、舞台上で障害のある表現者をサポートし共創するアカンパニスト(*伴奏者の意味)という役職を考案し人材を発掘育成してきました。徐々に成果が現れはじめ、障害のある参加者も急増し、今年のパラトリでは前回出来なかったような高い質の作品づくりに挑戦できると思っています。

 

【障害者の環境】日本はハードが整いすぎてソフトが弱くなっている一面も

――日本全体における障害者への考え方や障害者とアートにまつわることで変化はあったと感じますか?

栗栖:やはりロンドン大会以降は変わって来ていると感じます。「オリンピックだけでなく、パラリンピックにも注目しよう。応援しよう」という企業やメディアはすごく増えているのではないでしょうか。ただ、それがどこまでかはわかりません。私の周りのコミュニティでは変わってきていますが、それが日本国内の他の人たちに関しては、意外とまだ差別的な意識を持っている人もいるのだろうな、とは思います。

 

――障害者の問題が議論される時、よく欧米と日本の比較がされますよね。アメリカでは車椅子の人が快適に過ごせるけど日本はまだまだ、など。日本と欧米諸国における差というものも感じますか?

栗栖:そうですね。ただ、日本とロンドンを比べた時に、都市のインフラのバリアフリーに関してはそこまで差がないと思います。むしろ、たくさんエレベーターが付いていたり道路が舗装されていたりと日本の方がハード面では進んでいる可能性もある。新しい公共施設を作る場合には、必ず多目的トイレや車椅子も通れる通路を作らなければならない法整備も整っています。でもこれだけ障害者の社会進出が難しいのはやはり、心のバリアフリー、一人一人の意識の問題なのではないでしょうか。むしろ、ハード面が頼れるが故にソフト面が弱いというか、他人事になってしまっている人も多いのかもしれません。「自分がしなくてもいいではないか」と。

イギリスに行った時は、階段も多いし地下鉄も混んでいて大変でしたが、街の人達がみんな親切でした。席を譲ってくれたり荷物を持とうと声をかけてくれたり、道路をよけて空けてくれたり。こういうことって、東京だとまずないんですよね。東京で杖を2本ついて電車に乗っても、席を譲ってもらえません。この違いは大きく感じました。

 

メディアもアートも、障害に対する様々な選択肢があって良い

――日本でも昨年では、日本テレビの「24時間テレビ」に対抗してNHKが「バリアフリーバラエティ」といった番組を同時間で放送していましたよね。メディアの力が日本人の障害者に対する意識を形作っているのだろうとは思うのですが。

栗栖:やっぱりメディアの力は大きいです。日本のテレビ番組で、「障害者を可哀想で頑張ってる人」というのをよく目にします。最初にオチが決まっていて、そこにつじつまに合うように画を編集しているのかな、と。それが意図的なのか無意識なのかはわかりませんが、影響されやすい日本人にとっては、そうやって作られたイメージは強いですよね。

ただ、「24時間テレビ」も「バリアフリーバラエティ」もどちらが良い悪いということはなくて、両方あって良いと思います。私はどちらもやりませんが、色々な表現が出てきていることは事実。「24時間テレビ」を観て、障害や難病に興味を持つことや広く知れ渡ることもあるし、当事者からすると「実際はこんなものではない」と、別のものを発信するやり方もある。いろいろな考え方が社会には必要です。

 

――それはアートに関しても言えることでしょうか。

栗栖:もちろんそうですね。健常者は高校を卒業してから進学や就職など、色々な選択肢の中で自分の人生を生きますよね。でも障害者は特別支援学校を卒業した後、就労支援か生活介護かと、すごく選択肢が少ない現状があります。そして「自立しろ」と言われる。今の社会システムだと障害者はスポーツをするにしても、プロのパラリンピアになるか何もしないかという両極端になりやすいんですよ。間の選択肢が少なすぎる。

でも必ずしも、プロにならなくて良いじゃないですか。健常者も趣味でマラソンやったりバレエスクールに行ったりしますよね。だからパラトリなどによって、彼らに選択肢が増えるきっかけが作れればと。2020年に向かって支援人材が育ったり、スキルや価値観が培われたりして、アクセシビリティの色々なノウハウが街中に広がっていけば、障害者は自分の地域で様々なことに参加できるようになる。そんな2021年以降の社会の実現を目指して活動しています。あらゆる人が自由にやりたいことをやれる世の中になって欲しいんです。

<関連リンク>ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017

健常者と同様にどこまでの選択肢ができるかは未知数ですが、障害者も含めた幅広い選択肢というものについてあらためて考えさせられたのではないでしょうか。後編では栗栖さんが2020年の本番を迎えるまでに一人一人がしておくべき準備の話や、同情とか上から目線でない、本来あるべき障害者支援についてご自分の視点からの意見を語ってくれています。

後編につづく
【パラトリエンナーレ】日本の障害者は生き方の選択肢が少ない! 栗栖良依が見据える、スローな価値観と個々の生き方 (後編)

 

ライター :秋山悠紀

秋山悠紀

山形県出身、平成元年生まれ。女子高でサッカーをした後、大学でリベラル・フェミニズムに触れ、“女”の諸々に興味が湧く。演劇活動、フリーター、編プロ勤務を経て、現在は女性向けメディア中心に記事を執筆中。「保育園落ちた、日本死ね」問題のあれこれを勉強すべく、保育園でも働く日々。

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