【シンガポール最後の秘境】ウビン島(Pulau Ubin)に行った時のお話

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文:星野藍
グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。

ガイドブックに乗っていない観光地

2012年10月。とある大学に留学した友人に会いに、私はシンガポールへと向かった。シンガポールというとやはりこんなイメージが強いだろう。立ち並ぶ高層ビル、他民族、ビジネスの最前線、ゴミを捨ててはいけない、ガムを噛んではいけない、太陽に近い常夏の国……。

たった50年足らずで偉大なる発展を遂げたこの国には、私が好きな廃墟や自然などとは無縁なのだろうと思っていたのだが。
「星野さんが好きそうな島があるよ!」
彼は言った。
「シンガポールで唯一、自然が豊かで昔の生活が残っている島があるんだ。」
シンガポールの原風景の残る島。それは行かねばならない……! 私の胸は高鳴った。

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その島“ウビン島”へ向かうには、まずはチャンギポイントフェリーターミナル(Changi Point Ferry Terminal)を目指さなくてはならない。そこから発着する船で島に上陸するのだ。
チャンギポイントフェリーターミナルへは地下鉄とバスを乗り継いで行けるが友人曰く「バスがなかなか来なくてめんどくさいからタクシーで行こう。」との事で、彼の家の最寄駅周辺からタクシーで向かう事にした。

観光の中心地から外れた北東に位置するこの島は、外国人よりも地元の人々が訪れるらしい。ガイドブックにも載っていない。都会の喧騒を離れ、自然に触れる。乗車賃2.5シンガポールドル(2012年当時。現在は3シンガポールドルに値上がりしたらしい。)を支払い小さな船に乗り込む。船の定員は12人、12人集まったら船が出発する。朝の7時から夜の7時まで運行している。

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甲板で受ける海風が気持ち良い。

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船旅はあっと言う間で、10分ほどでウビン島に到着した。ちょっとボロな港が冒険心を掻き立てる。

いざ、ウビン島の散策へ

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島に到着しまず目に入ったのはレンタサイクル。自転車を借りてサイクリングロードを走るのがこの島でのベストな楽しみ方だ。これはいいなと思ったら友人「ごめん、自転車乗れないんだ……。」……意外や意外、まさかのまさかだった。まぁでも、歩いて散策した方がゆっくり移動する分小さな気付きも多いかもしれない。

ちなみにレンタサイクルの値段は2〜50シンガポールドル。10ドルくらいの自転車を借りるのがオススメだそうで、2シンガポールドルのものだとボロすぎて扱いが大変との事。

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散策する前に、ふと目に付いたお店でココナッツジュースを飲む事にした。

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生の実にストローを刺したワイルドなスタイル。甘くはないがさっぱりとしていて、蒸し暑さで消耗した身体に優しく染み渡る。しかし、生のココナッツジュースはちょっとお腹への刺激が強いようだ。我々2人とも速攻で腹を下し、散策のスタートはトイレからの始まりとなった。

 

見た事のないシンガポール

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今はもう使われなくなったものものがそのままになっている。レトロを通り越した景色が至る所で広がっている。車は通っておらず、信号もない。

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サイクリングロードは、熱帯雨林のド真ん中を突っ切る形で造られている。見た事のない程背の高いヤシの木に圧倒される。

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ヤシのほか、パラミツ(ジャックフルーツ)やバナナといった熱帯フルーツも随所で見られる。食べられるかどうかは不明だ。

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バナナの花を実際に見たのは初めてだったので、こんな形をしているのかと心底驚いた。花開くとその中から新たなバナナの実が現れ成長していくらしい。

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まるで時が止まったかのような景色だ。あたり一面に草木が広がる。シンガポール最後の秘境と言っても過言ではない。

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ウビン島には、少数ではあるが住んでいる方もいる。

シンガポール本土ではまず見なかったタイプの木造住宅。色鮮やかに塗られた壁からアジアの熱気を感じる。こちらのお宅、周りに響き渡る大音量で自宅カラオケ大会の真っ最中だった。日本の住宅事情と常識ではまず考えられない。アップテンポなメロディーが否応無しにこちらのテンションもぶち上げてくださる。

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家よりもずっと高い木がそびえている。改めてすごい光景だと暫く見入ってしまった。湿気対策の為、高床式住宅となっている点も見逃せない。ここは、本当にシンガポールなのだろうか……。本土との違いが余りにも大きい。

 

ムスリムの墓、華僑の墓

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現地の住宅を横目に暫く歩いていくと立て看板があった。この先にイスラム教徒の墓があるらしい。私は廃墟や旅が好きだが、墓地も好きだ。これは是非見ておきたい。

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容赦なく襲いかかる無数の蚊を振り払いながら草むらをガシガシ歩いていくと、見た事のない小さなオブジェがポツポツ点在しているのが見えた。あれがムスリムの墓だ。石の上に布を被せている、不思議なスタイル。
「てるてる坊主みたいだね。」
「不気味な人形みたいにも見える。」

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墓には名前が彫られていなかった。
イスラム教徒は地方により様々ではあるが基本的に土葬で、墓の目印は墓石であったり、棒を刺すだけだったり、煉瓦を置くだけだったりと簡素なものが多いようだ。遺体の頭は必ずメッカの方角に向けて埋葬している。

苔生し、風化したこの墓に訪れる者はいるのだろうか? イスラム教では、墓は作っても墓参りする事は禁じられていると聞いた。厳格な一神教の下、アッラーを唯一神とするイスラム教においてその他のものを拝む事は偶像崇拝に繋がるらしい。しかしこれもまた国や地域差があり、墓参りを行う地域もあるので一概には言えない。

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別の場所にあったムスリムの墓は、これまた違った形状をしていた。何を意味する形なのだろう。

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布を被せてあったのはまさか女性だからだろうか……? 想像力を膨らませるものがある。

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ムスリムの墓だけではなく、華僑の墓もある。やはり風化し自然と一体化しそうな勢いではあるが、頻繁ではないもののたまに訪れている人はいるようだ。

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華僑の墓もまた、一概にもこれというものはなく国や地方により様々らしい。

 

当時の生活の跡

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遊歩道を歩いていると、何やら朽ち果てた小さな建物が見えた。草をかき分けそこへと近づいてみる。

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島の住人の住居跡だった。すっかり風化が進み、この高温多湿の中だと数年後には屋根がぺっしゃり潰れてしまいそうな装いだった。

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簡素なトイレ。堀が浅く少々驚いた。恐らく快適とはいえないだろう。

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小さな子供も住んでいたのだろうか、三輪車の状態だけが妙に綺麗だった。

 

ゆっくり流れる島時間

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ゆっくりと、島時間は流れる。目に飛び込む緑に癒される。

ウビン島は10平方キロメートルほどの小さな島だ。島をぐるりと周り探索の疲れを癒す為再びココナッツジュースを飲んだ。渇いた身体に染み渡る。(再び腹を下したのは何故か友人だけだった。)島にはイノシシやサルもいるらしいが今回遭遇する事は叶わなかった。

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夕日を眺めながら黄昏る。ああ、一日が終わる。ぼーっと、日が沈む。ジメジメとした高温多湿の中アップダウンの多い道を歩き続けた為か椅子に座るとドッと疲れが降りかかってきた。だけど実に心地よい疲れだ。

ウビン島はどうやらドリアンも美味しいらしい。この時は10月でドリアンの旬の季節ははずれてしまった。シンガポールのドリアンの旬は6〜8月と11〜12月の2回。次に行く機会があったら是非食べてみたい。

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逢う魔が時も近づき、私たちは帰りの便に乗った。名残惜しい小さな大自然を見つめ、コンクリートジャングルへと戻っていく。

ウビン島。身近な日常の中の非日常を楽しめる素晴らしい島だった。一味違うシンガポールの旅をしたいという方には是非訪問をオススメしたい。

ライター :星野 藍

星野

グラフィック&UIデザイナー、写真家、書道家。福島県福島市出身。従姉の死、軍艦島へ渡った事をきっかけに廃墟を被写体とし撮影を始める。
2016年『チェルノブイリ/福島 ~福島出身の廃墟写真家が鎮魂の旅に出た~』(八画文化会館)上梓。廃墟の他怪しい場所やスラム街、未承認国家にソビエト連邦など、好奇心の侭に国内外を縦横無尽に徘徊する。

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