【毒蛇ヤマカガシの毒性】毒の強さはハブの約10倍! マムシの約3倍! プロが教える危険動物ヤマカガシとの上手な付き合い方

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記事内の写真 / 文:里中遊歩 
東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。主な著書に「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」など。

兵庫県の小学生がヤマカガシという毒ヘビに咬まれ、一時意識不明になってしまっていたとのこと。

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そこで急遽今回は、ヤマカガシとはどういった毒ヘビであり、どこに棲息しているのか、また本当に危険な動物なのか、といったところについて話をしていこうと思う。

 

ヤマカガシってどんなヘビ?

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ヤマカガシの“カガシ”とは、日本の古語で“ヘビ”という意味を持つ。

つまりは「山に棲息するヘビ」という意味を持つ名前なのであるが、実際のところは平地にも多く棲息している。むしろあまり標高の高い山地には見られず、山の中で出逢うにしても、然程に標高の高くない場所であることが多い。

要は「町なかであっても、充分に棲息している可能性があるのだよ」ということだ。カエルが大好物であることから、まあカエルが棲息しているような場所ならば、大抵ヤマカガシも棲息していると考えて良いであろう。町なかの公園や河川沿いなどなど、実は私たちの生活に非常に密接したところに、昔から棲息しているのだ。

有鱗(ゆうりん)目ナミヘビ科ヤマカガシ属に分類され、北海道と一部島嶼部を除く日本全国に棲息する日本固有種である。全長は60~120cm程度、非常に大人しくて臆病な毒ヘビであり、基本的には滅多なことがない限り、人を襲ったり咬みついたりすることはない。

“基本的には”と書いたのは、やはり個体差というものがあるから。

人間にも、右頬を打たれたらニッコリ微笑んで左頬を差し出す人もいれば、風が少し当たっただけでも青筋立てて怒り出す人もいる。だからヤマカガシの中にだって、やたらと威勢の良い輩がいないとも限らない。実際に私も、山の中で出逢って撮影したりして愛でていた時、いきなり先制攻撃を喰らいそうになったこともある。だから決して油断をしてはならないのである。

 

実は猛毒を有する毒ヘビ『ヤマカガシ』

そして今回、小学生が咬まれて一時意識不明となってしまったこともあり、ヤマカガシの“毒”というものが大きくクローズアップされている。

ヤマカガシは本当に猛毒を持つ毒ヘビなのであろうか?

答えは「イエス」。
それも大きくもう7回くらいは頷きたくなるくらいに「イエス」。

優しく大人しく内気でカワイイと思っていた女性の持つバッグの中から、ふとスタンガンと護身用ナイフが顔を覗かせているのを見つけてしまった時の衝撃に近いくらいの猛毒を有しているのだ。いやこれはあくまでも喩え話なのであって私の実体験ではない、為念。

しかも、上で「スタンガンと護身用ナイフ」と2つの武器を挙げたのにもちゃんと理由がある。

なんとこのヤマカガシ、2種類の毒を有しているのである。

一つ目の毒、それは頸腺毒だ。主に護身用の毒であり、頸部を強く掴んだりすると沁み出したり飛散したりする。死に至るようなことはほとんどないが、目に入ったりすると最悪の場合は失明することもあるので注意が必要だ。

しかもこの毒、ヤマカガシ自身が生成したものではなく、捕食したヒキガエルの持つブフォトキシンという毒を貯蔵して再利用しているのだ。

通常、ニッポンのヘビ類は、毒を持つヒキガエルを食すことはない。そんなもの食べたら、自身がその毒にやられて死んでしまうもの。しかしヤマカガシだけは平然とヒキガエルを食べることができ、その毒を自身の頸線に貯め込み、イザという時にそれを飛散させて自身の身を護るのである。

まるでどこかの政治家のようなしたたかさであるなあ。

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そして二つ目の毒、これこそが今回話題となっている、デュベルノワ腺毒と呼ばれる毒である。

ニッポンの毒ヘビと言えば、一般的にはハブとマムシが有名で怖れられているが、実はこのヤマカガシのデュベルノワ腺毒、毒の強さはハブの約10倍、マムシの約3倍であると考えられている。

スタンガンはスタンガンでも、違法改造してえげつないくらいに出力を高められて殺傷能力を持つスタンガンだと思って頂ければ良いであろう。

ハブやマムシと同様、「出血毒」と呼ばれる種類の毒なのであるが、その性質は全く違う。細かいことを詳しく書いてもよく判らないことになると思うので簡単に説明しよう。

まず毒牙は、上顎の奥歯部分にある為、かなり深く咬まれないと毒は注入されない。咬まれた際に大量に出血したり、大きく腫れ上がったりすることもほとんどない。だからって安心していると、実は水面下(この場合は“体内”だけど)でとんでもないことが起ころうとしているので油断してはならない。

血液内に浸透したこの毒の色々な作用を経ることにより血小板が破壊され、やがて血液の凝固能力が失われてしまう。そして数日~10数日が経過した頃、やおら体内のアチラコチラからブワッと出血が起こり、内臓出血やら腎機能障害、最悪の場合には脳内出血などを引き起こして命を落としてしまうのである。

ううむ。スタンガンと言うよりは、「おまえは既に死んでいる」とか告知されながら秘孔を突かれる状態に近いのかもしれないな。

 

そんな猛毒を持つヘビなのに、何故に今ひとつマイナーなのか?

これだけの毒を持つというのに、その存在を今回の一連の騒動で「初めて知った」という方も少なくないのではないだろうか?

ちょうどこの事故が発生していた頃、私は千葉県の山中で親子向けの動物探索イベントを実施しており、たまたま通りかかったヤマカガシにちょっと手伝ってもらって、彼らについての説明などをしていたのであるが、やはりほとんどの親子が、ヤマカガシは知っていてもその毒の存在は知らなかった。

それもその筈、実はこのヤマカガシ、1972年に死亡事故が発生するまで、毒ヘビであることが知られていなかったのである。わずか40数年前のことだ。

咬まれてから時間差があって発症することから、症状が出てもヤマカガシに咬まれたことが原因であるとは思いもよらず、恐らくは「原因不明の奇病」などで片づけられてしまってきたのだ。だから1972年以前にも、実際には多くの人がヤマカガシの毒によって命を落としていったのではないかと推測できる。

人間の知識の上で、それだけ毒ヘビとしての歴史が浅いヘビだからこそ、また1972年以降、咬傷による死亡例が3件、重篤例が10数件しか報告されていないことから、国内最強の毒を持つヘビでありながら、今ひとつマイナーな存在なのである。

まあそれだけ咬傷例が少ないということは、余程のことがない限りは毒牙を剥くことはないということに繋がるワケで、やっぱりヤマカガシは温厚で穏やかな毒ヘビなのである。

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出遭ってしまったらどうすれば良い?

もしどこかでヤマカガシに出遭ってしまったらどうすれば良いですか?

これまた時々訊かれることがある。
そんな時、私は「どうもしなければ良いです」と答える。

ここまでも散々言ってきているが、ヤマカガシは基本的にとても大人しくて臆病なヘビである。

「ぎゃあ、ヘビだー!」とか不必要に騒ぐから、ヤマカガシの方だって警戒してしまうのだ。変なちょっかいとか出さず、温かい目で観察をして、飽きたらそのまま立ち去れば良いだけのことである。

それでも万が一、何らかの弾みで咬まれてしまった場合には、ともかく一刻も早く血清を打ってもらうなどの適切な処置が必要となる。

と言いつつこの血清、どこにでもあるワケではなく、置かれている場所は全国に数箇所と限られている。

その中で最も有名なのは、群馬県の日本蛇族学術研究所/ジャパンスネークセンター(通称:ヘビ研)。もしもヤマカガシらしきヘビに咬まれた場合、どんな咬まれ方であったにせよ、すぐに日本蛇族学術研究所に、可能であれば咬まれたヘビの写真を添えて連絡し、判断を仰ぐことをオススメしたい。

参考:ジャパンスネークセンターウェブサイト

そして今回の話とは全然関係ないけど、できることならばこのジャパンスネークセンターへ一度は足を運んで、ディープなヘビのアミューズメントパークの世界を存分に堪能して頂きたいものである。

楽しいっすよ、ハブの採毒実験とかニシキヘビとの触れ合いコーナーとか。

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ライター : 里中遊歩

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東京都東村山市在住。日本野生生物リサーチセンター代表。音楽ディレクター、広告プランナーなどを経て、現在では野生動物の調査の傍ら、著作活動や各講演会における活動、及びメディアへの出演や協力を行なう。主に哺乳類を軸とした動物全般の調査に重点を置いて活動。「日本に棲息する外来種生物」や「東京都内に棲息する動物たち」を中心に調査を行なう。主な著書として、「サトナカがゆく! ~風まかせ動物探索記」(全国農村教育協会)、「絶滅動物調査ファイル(『もしも』の図鑑)」(実業之日本社)など。

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